5月31日(日) 中部学生鉄道研究会連盟主催 『近鉄鮮魚列車「乗る!撮る!録る!ツアー」』参加報告 その①鉄道研究会

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皆さまこんにちは。鉄道研究会ブログ担当の坂本でございます。

本当に毎日蒸し暑いですね~。学内の冷房設定温度をもう少し配慮できないものでしょうか(*_*)

さて、今回当研究会も加盟する中部学生鉄道研究会連盟(以下:中部学鉄連)では、近鉄電車宇治山田(三重県伊勢市)~名古屋間で貸切電車を運転し、乗車いたしました。

そして今回貸し切ったのは何と、近鉄随一の珍車である鮮魚列車こと2680系X82編成!!!

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「鮮魚列車」こと2680系X82編成 宇治山田

普段は伊勢で早朝に水揚げされた新鮮な魚介類を大阪上本町駅まで漁師・行商人と共に運ぶこの電車。

当然普段は大阪方面へのルートである山田線・大阪線を走行しており、名古屋~伊勢中川(以下:中川)間の名古屋線には入線いたしません。

従って今回の名古屋線入線は極めて珍しいことでありそもそも普段は関係者以外の乗車はできないので、乗車できるだけでも大変貴重な体験なのです。

 

今回はその①としてこの鮮魚列車そのものと専用車両2680系について詳しくご紹介いたします。

そしてその②では、実際の運転当日の車内の様子をお届けしてまいります。

今回の集合場所・時間は近鉄山田線の宇治山田駅(三重県伊勢市)に10時20分。

溝口くん率いる団体行動組は名古屋7:41発急行松阪ゆき(松阪で大阪からの急行五十鈴川ゆきに乗り換え)で宇治山田へ向かったようですが、坂本は朝が苦手なので別行動。

名古屋8:50発の宇治山田ゆき特急(12200系NS50編成)2号車の12030号車に乗車して、一路宇治山田へ向かいます。

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↑往路に乗車した12200系NS50編成と、乗車した12030号車の車内銘板。

揺られること1時間20分余り、電車は伊勢観光最大の玄関口、宇治山田へと到着。

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↑宇治山田に到着した乗って来た電車(上)と駅名票(中)、駅舎(下)

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↑到着すると待っていた部員たちに一斉にカメラを向けられるという手荒な歓迎が。

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↑受付をする宇治山田駅構内には、参加する多くの人たちが群れを成していました。

学鉄連は全国組織で各地区に支部があり、中部学鉄連加盟校の鉄研学生の他、今回の運転に参加するため主に関西の大学から集まった関西学鉄連加盟校の鉄研学生などが多く集まりました。

近鉄の「本丸」たる関西地区には近鉄マニアの学生が多数「棲息」しており、喜び勇んで参加した学生も多かったようです。

受付をした人にはこちらの記念品が配られました。

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↑記念品の特製クリアファイル。今回だけの完全限定品です。

 

さて、受付を済ませて時刻は午前11:00。いよいよ始発となるホームに上ります。

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今回乗車するホームは行き止まり式の1番のりば。

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↑この1番のりばは、2番乗り場とともにかつて宇治山田駅が行き止まり式の終点だったころの面影を強く残すホームで、今も一部の営業電車が発車しています。

↗そしてその1番線の電光掲示板には「貸切」の文字が。

そしてそのホームに停まっていたのは...

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↑今回の主役。鮮魚列車こと2680系X82編成です。

さて、ここで近鉄鮮魚列車と現在の専用車両である2680系について解説させていただきます。

鮮魚列車は1963(昭和38)年9月21日、「伊勢志摩魚行商組合連合会」の貸切列車として、同連合会会員のみが乗車できる電車として運行が開始されました。

乗車者は魚介類の入った箱を「手回り品」として持ち込むため、「手回り品料金の定期券」を利用するそうです。

現在は早朝6時30分頃に宇治山田を出発して9時頃に大阪上本町(大阪市天王寺区)に到着し入庫する運用、そして夕方出庫し17時15分に上本町を出発して午後7時30分過ぎに松阪へ到着し入庫する運用、合わせて1日1往復の運用が日曜・祝日を除く毎日組まれています。

途中の停車駅は伊勢市、松阪、中川、榊原温泉口、伊賀神戸(いがかんべ)、桔梗が丘、名張、榛原(はいばら)、桜井、大和八木、大和高田、鶴橋で、1976(昭和51)年3月ダイヤ改正以前の急行と同じです。他にも適宜通過待ちなどのため運転停車することがあります。

かつては魚介類や野菜、手荷物、新聞などは客荷合造車(一般旅客車両の一部を荷物室として仕切ってある車両)の荷物室に載せられていることが一般的でしたが、こと魚介類などは生臭い匂いが発生するため、徐々に車両を分ける必要性が出てきました。

そこで近鉄が考え出したのが、貸切電車として設定された「鮮魚列車」という運転形態だったのです。

初期には荷物専用電車を用いたり、当時の新車である1400系列から、戦前生まれの古豪である2200系列を用いたりするなど、様々な車両を運用しておりました。

しかし車内に生臭い臭いが籠りやすいことから、1970年代の終わり頃に元名阪特急車の2250形や元京都・橿原線特急車の683系などを改造した600系を鮮魚列車専用車両として用いるようになりました。

ですがそれらは2両編成で運転されていたため混雑しやすく、さらに長距離を走行する電車でありながら冷房がついていませんでした。また、車両そのものの老朽化も深刻な問題でした。

そこで1989(平成元)年にはかつての大阪線、名古屋線通勤車の名車である1481系3両編成に冷房取り付けと手洗を設置する改造を施して2代目専用車両に仕立てました。

しかしそれも老朽化が進み2001(平成13)年、1481系は廃車され、代わって2680系X82編成を改造の上3代目専用車に着任させ、現在に至ります。

かつて行商人専用車は各地に点在しておりましたが現在は珍しく、特にこうした鮮魚輸送専用列車を運転しているのは全国の私鉄でも近鉄のみです。

 

続いて3代目車両2680系について。

2680系は1971(昭和46)年、2600系電車の派生形列として3両×2編成が登場いたしました。電算記号(※)はXです。

※近鉄では車両の管理用にアルファベット+数字で表される「電算記号」を各編成に付けている。現存する2680系の電算はX82。

近鉄の通勤車としては初めて新製当初から冷房を搭載した、やや試作的要素が強い車両です。

記事冒頭で今回の運転が2680系が鮮魚列車となってから初めての名古屋線塩浜以北入線と書きました。

しかし専用車への改造前の一般車時代には、1979(昭和54)~2002(平成14)年までの長きにわたって名古屋線に配置されており、今回は里帰りを果たしたことになります。

この電車の大きな特徴は、主電動機(モーター)、制御機などの電装品を、日本屈指の名車である初代「ビスタカーⅠ世」こと10000系電車から流用していることです

10000系はその特殊さから7両×1編成のみが1958(昭和33)~1971(昭和46)年までたったの13年間しか在籍せず、非常に短命だったことで知られています。そして廃車後はすぐにスクラップにされたため、動画、走行音付きの資料などはほとんど残っておりません。

また既に2002年、2編成存在した2680系のうち、鮮魚列車に改造されなかったX81編成は廃車され、スクラップにされています。

従ってこの2680系X82編成が、かの華やかな「ビスタカーⅠ世」の面影を遺す最後の車両となっているのです。

しかし、登場からは既に44年が経過しているため激しく老朽化しており、試作要素が強いことも考えれば現役であることすら奇跡的な状態です。

 つまり裏を返せば数年以内にスクラップにされても全くおかしくないわけです

今回の乗車体験がいかに貴重な経験となるか、少しでもご理解いただけたでしょうか。

さて、これより先の当日の様子については記事その②へと続きます。

そちらもどうぞ合わせてご覧くださいませ。

本日もご覧いただき誠にありがとうございます。