*この記事を読む前に、6日に投稿されたものを読むことを推奨します
得票数第4位の作品
テーマは『えんぴつ』
単純なテーマこそ難しい!
それではどうぞ
えんぴつ 蘇我部海豚
カリカリカリ、と紙に文字を書く音が部屋に響く。
小さいはずのその音が耳にハッキリと届く程、静かな時であった。
紙がすれる音や、その部屋に居る者達の息を吐くわずかな音が、筆記用具が文字を走らせる音にのまれていく。
ここはシュトローム学園高等部、文芸部の部室だった。今はその部活動の時。十人にも満たない部員達が、『三題噺』という即興の小説を書いているのだ。
そんな中、ふと立ち上がる者がいた。二年生の部員だ。
彼は他の皆が紙に向かっている中一人、机の横にかけていたカバンの中からえんぴつけずりを取り出すと、何食わぬ顔で部室のコンセントにえんぴつけずりの電源をつないだ。
えんぴつけずりに、さっきまで使っていたえんぴつを……挿入。
ギャギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
突如部屋中をうめつくすえんぴつけずりの音。
それに驚き絶叫をあげる部長。部長に驚き叫んでしまうえんぴつけずりの彼。
「突然なんなの!!」
「えんぴつをけずっただけです部長!!」
「なんでそんなことしてんの!?」
「だってえんぴつを使えば短くなって、丸くなって、けずらざるを得ないじゃないですか!」
「何でえんぴつを使ってるの!?」
「えんぴつが好きなんです! 何ですかそれは! 部長はオレにクーゲルシュライバーを使えと言うんですか?」
うぬぬ、とうなる部長の少女は、えんぴつけずりの彼がまるで悪びれた様子もないのを見て、不満そうながらも黙って、再び自分の作品に戻った。
カリカリカリ、と再び静かな時間に戻って……しばらくした後。
ギャギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!
「あぁもう、うっさい!」
「なんすか部長! 何が不満なんすか!」
「音! そのうるさい音! 耳障りなのよ!」
「そんな事言ったってえんぴつをけずらないと書けないじゃないですか!」
「他のえんぴつは!?」
「ありません!」
「じゃあ他の筆記用具を使いなさいよ!」
「そんな! 部長はオレにクーゲルシュライバーを使えと言うんですか!?」
えんぴつけずりの彼がまるでゆずらぬと言った表情をしていたので、部長はしぶしぶと再び自分の作品に戻った。
直後。
「あっ」
例の彼が使おうとしたえんぴつがバキッと折れ、芯がすさまじい速度で宙を飛んだ。
その芯は何の因果か、部長の右目に着弾した。
「はうあっ!?」
「あっ、すみません部長」
がたっ、といい加減我慢がならぬと部長が右目をおさえ、顔を真っ赤にして立ち上がる。
ビシッとえんぴつ野郎を指してがなり立てた。
「あぁもう! うるさいし芯は痛いし、いい加減えんぴつはやめなさい! 高校生にもなってえんぴつ!? えんぴつしんちゃんは小学生よ!」
「えんぴつディスってんですか部長! えんぴつはオレの相棒なんすよ! ゆずれません! 部長はオレにクーゲルシュライバーを使えと言うんすか!?」
「さっきから、『クーゲルシュライバー』ってなに!?」
「ドイツ語でボールペンです、部長……」
ポツリ、と前髪で目元が隠れた一年生の少女が二人の言い争いに口を挟んだ。
「あっ、そう……」と部長が気の抜けた声を出し、着席。
えんぴつ野郎も、着席。
第一次クーゲルシュライバー戦争、終結。
「よし、できた!」
翌日、第二次が勃発する。
いかがでしょうか
作者のコメントがほしいなーって言ってみたり
明日も更新します
バイトが終わって元気があれば…
コメント ( 3 )
クーゲルシュライバーなら 仕方ないですね
日時: 2011年04月09日
露骨な催促には応えざるを得まい
こうして改めてみると酷い出来だよね(白目
日時: 2011年04月09日
なぜえんぴつを使っていてボールペンが出てくるのか…シャーペンではだめなのか。気になります。
日時: 2011年04月12日