6月10日(水) 城北線ツアー+α鉄道研究会

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みなさまこんにちは。鉄道研究会ブログ担当の坂本でございます。

本日はこの地域も本格的に梅雨入りした中、貴重な晴れ間となりましたね。

さて、そんな本日は学科対抗スポーツフェスティバルが開催されておりましたため部活は活動禁止でした。

しかし、スポーツフェスティバルに参加しない部員たちの一部は有志で集まり、城北線に乗車するツアーを開催いたしました。

今回はその様子をご覧いただきます。

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↑奥の中央線を走る貨物列車は、本来ならこちら側の線路を通ることになっていたのかも知れません...。  勝川

突然ですが皆さまは「城北線」という路線をご存知でいらっしゃいますでしょうか。

厳密には「東海交通事業城北線」と言い、JR東海の子会社で、同社駅の業務委託などを請け負う「東海交通事業」(以下:TKJ)が運行する路線です。

全線非電化で他路線との乗り入れはなく、加えて勝川~枇杷島間11.2kmという極めて半端な区間であり、交通の専門家や鉄道ファン以外の知名度は沿線の名古屋・春日井・清州市内ですら高くない路線です。

営業成績は毎年低空飛行で、輸送密度は1日1kmあたり500人以下と非常に厳しいものです。

さて、こんな奇怪な路線である城北線。一体なぜ存在しているのでしょうか。

簡単にご説明申しあげますと、これはかつて東海道線稲沢・枇杷島から分岐、中央線勝川を経由して、さらに高蔵寺から愛知環状鉄道線(以下:愛環線)の前身、国鉄岡多線(一部未成線、多治見~岡崎)を通って岡崎で再び東海道線に合流する、国鉄が計画した名古屋駅を経由しない貨物列車の壮大な迂回ルートのなれの果てなのです。

いわゆる「南方貨物線計画」(名古屋貨物ターミナル~笠寺・大府、未成線)なども絡んでくる、国鉄と政府が犯した大変な税金の無駄使いの典型例です。

城北線の場合はほとんどの区間が日の目を見なかった「未成線」の国鉄瀬戸線(愛環線瀬戸市~稲沢・枇杷島)が一部区間のみ建設、運行されているもので、本来は勝川~高蔵寺間を複々線化し、貨物列車は現在とは違って増やした側の複線を通るはずでした。

完成していたら関東で言う武蔵野線や京葉線のように貨物列車の主要迂回ルートとなっていたはずです。

当初の計画では岡多線も高蔵寺ではなく多治見へと向かう予定になっていましたので、現在の路線図とはかけ離れた路線構想がかつては展開されていたことになります。

高架化後の勝川駅上下線間の奇妙なスペースや、神領車両区付近の車両区を挟んで反対側に伸びる線路が敷かれていない複々線化用線路用地跡など、今でもよく目を凝らせば計画倒れした路線が残した歪な空間がこの大学の近くに広がっています。

さて、城北線についてご説明したところで本日の様子を。

まずは神領駅に集合し、14:02発名古屋ゆき普通電車で勝川へ向かいます。

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↑電光掲示板と乗車した211系5000番台K7編成。

勝川到着後、まずは切符を買います。

城北線内はICカード乗車券の類が使えないからです。

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↑ちゃんと「城北線」と書かれた切符。

JRの券売機で買えるのですが、肝心の運賃表の類が一緒に掲示されているわけではないため厄介です。それだけ利用者が少ないということかもしれません。

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↑しっかり乗り換え案内はなされています。

2009年に完成した高架化によってすっかり趣を変え、綺麗になった勝川駅ですが、

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↑相変わらず城北線への乗り換えは非常に面倒です。(JR駅前広場より望む)

歩かされること500m強。

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↑ようやく城北線の勝川駅に到着いたしました。

この駅は開業当初より仮の駅・高架線で営業しています。エレベーターなどはありません。

ご覧のように中央線の高架(左)とほぼ全く同じ高さの高架線になっているため、現在用意されている勝川駅の中央線上下線間の城北線用スペースにはこのままでは入れません。

いずれ乗り入れが行われる際にはこの駅部分を壊して新たなアプローチ部分を建設するものと推察されますが、一体いつになることやら...。

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↑勝川駅の時刻表。全線開業当初とダイヤはほとんど変わらず、本数は少ないです。

階段を上がると、

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↑簡単な車庫があり、車両(キハ11-201)が休んでいました。清掃、点検、給油など結構やれることは多いようです。

ここからさらに50mほど歩くと乗車ホームです。

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↑今回乗車したキハ11-202。(キハ11形200番台)

JR東海の鋼鉄製キハ11形が壊滅状態である中、今後もしばらく安泰と思われる貴重な鋼鉄製キハ11形です。

独特のTKJ色を纏い、2両が城北線内専用車両として存在しています。

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↑しっかりと「東海交通事業」と書かれた銘板が貼り付けられています。

かつてはJR東海色を纏ったキハ11-203・204も存在し、TKJ所属でありながら普段はJR高山本線などで運用され、検査時の代走などで城北線を走行したこともありました。(204は城北線入線実績なし)

しかし本年に入って203・204号車は第3セクターのひたちなか海浜鉄道(勝田~阿字ヶ浦、茨城県)に譲渡され、現在はこの2両のみが在籍しています。

従って平日朝の2両とも運転する時間帯は、予備車がありません。

ちなみに開業当初は専用色のキハ40系列が使用されていました。

基本的には普通のキハ11形と変わりはありませんが、201,202号車独特の部分として、

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↑乗降口にステップがありません。

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↑そしてこちらは客室ですが、手洗が設置されておりません。

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↑こちらは運転席。若干の違いはあるものの基本的には普通のキハ11形と同じです。

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↑城北線はワンマン運転で、なおかつ枇杷島駅以外は無人駅であるため、このように車内に整理券受け取り機と運賃箱が装備されています。

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↑勝川駅の駅名票。JR東海のそれに似ていますが、TKJ独特のアレンジが施されています。

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↑こちらは運賃表。建設時の負債と慢性的な利用者不足の影響で、運賃は高いです。

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↑このように利用方法を見やすく掲示したり、

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↑縁起が良いと評判(?)の「勝星きっぷ」(勝川~尾張星の宮)を発売したりと、乗客の確保対策には余念がありません。

また、時折臨時列車の運行も受けているようです。

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↑勝川駅方面を遠望した図。奥には中央線の貨物列車が走ります。

城北線の出自を考えると、何とも悲しい感じがする風景です。

さて、列車は14:30、定刻通りに発車。

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↑左側から国道302号線と名古屋第二環状自動車道(以下:名二環)が近づき、勝川4丁目交差点付近から並行します。

かつて国鉄の高規格路線として設計された過去があるだけに全区間複線高架非電化という非常に贅沢な設備となっていますが、平日朝以外は基本的に1両のみが起終点間を行き交うダイヤのため、複線である意味は残念ながらない状態です。

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↑非常に高い位置にある高架線であるため眺望がよく、名古屋駅周辺の高層ビル群(写真中央)も望めます。

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↑そして列車は名鉄小牧線(味美~味鋺)を乗り越すと、

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↑まもなく味美に到着します。

名鉄小牧線にも味美という名の駅がありますが、1.5kmほど離れており、乗り換えには適しません。

ちなみに私は小学校低学年の頃、両駅間を母と一緒に乗り換えができると勘違いして延々歩いたことがありました。

いい薬になりました。ええ、本当に。

味美を発車した列車は、

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↑名古屋高速1号線と名二環の結節点である楠JCTのダイナミックな高架の下を潜り抜けます。

城北線の大きな見どころの一つと言えます。

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そうするうちに列車は間もなく比良に到着。ここから名古屋市に入ります。

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↑栄町のテレビ塔や、名古屋「城」の「北」を走るだけあって名古屋城も車窓から見えます。

さて、この次の小田井の先あたりにかけて、高架線はさらに高さを稼ぎます。

というのも...

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↑小田井の先では名鉄犬山線(上小田井~中小田井)と地下鉄鶴舞線(上小田井~庄内緑地公園)の高架線をさらにその上で乗り越す、いわゆる「高々架」となっているからです。(写真奥が名鉄上小田井駅)

小田井も名鉄上小田井・中小田井とは非常に距離があり、やはり乗り換えには適しません。

貨物列車優先の構造で作られた路線であることがよく分かります。

その先で列車は右カーブを描くジェットコースターのようなアップダウンのある高架をスピードを上げて走ります。

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↑さて、城北線随一の見どころである区間がこちらです。(小田井~尾張星の宮)

右側から不自然に下がってくる勝川方面への高架。

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↑上下線間はこのように非常に間が開きます。

しかし何か分岐するというわけでもなく、この先で再び同じ高さの高架へ合流します。

実はこの高い方の高架は城北線が「国鉄瀬戸線」として稲沢方面へ向かおうとしていた最大の痕跡なのです。

この高架はこのまま右に分岐して、東海道線の貨物用別線である「稲沢線」へと合流する手筈となっていました。

実際高架が建設されず用地買収だけで終わった区間に建つ家や付近の道路などは、不自然な方向へ曲がって建っていたり、奇妙な方向へ向かっていたりするなど、歪な用地買収の跡が車窓からも見られます。

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↑そのあたりを抜けた直後にあるのが尾張星の宮駅。ここから清須市に入ります。

1991年の開業当初は枇杷島駅へアプローチする高架線が出来上がっていなかったため、ここが終点でした。

1993年に枇杷島まで開業した際、中間駅となりました。

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↑尾張星の宮を出ると右側にキリンビールの名古屋工場が。

ビールの入ったジョッキの形をした醸造タンクが印象的です。

ここでは見学ツアーの他出来立てのビールの試飲もできるそうで、お酒を嗜む人にとっては嬉しい施設です。

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↑そうして列車はまもなく東海道線、稲沢線、東海道新幹線を車窓に見つつ、

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↑終点の枇杷島に到着しました。

枇杷島は有人駅ですが、あくまで駅員はJR東海の業務しか行わないため、ここでも車内精算です。

運賃を支払った者は支払い済み証を受け取り、改札を出るか、JR東海道線に乗り換えとなります。

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↑城北線ホームより名古屋方を望む。稲沢線の上下線間にホームがあることがわかります。従って貨物列車もこのホームをよく通過いたします。左の電車は東海道線下り新快速大垣ゆき。

さて、ここで溝口くんから「今日はキハ25形の新製後試運転がある。しかも6両編成で」ということで、撮影タイムに移ります。

東海道線ホームに移ると見知った顔が。

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↑さすらいの撮り鉄鉄研部員でした。相変わらずいい笑顔。

本命のキハ25が来るまで撮影をしながら暫し待ちます。

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↑稲沢線を下るEF66-52牽引の貨物列車。

0番台全廃秒読みとか去年の今頃は騒がれていたような気がするのですが、何だかんだで走っていますよね。

ちなみに先日国鉄色で出場したEF66-27もここ数日このあたりを通過しており、沿線は撮り鉄であふれかえって戦場のようだったようです。

そしてやはりマナー違反も散見されたと聞きます。

みんなマナーを守って列車撮影をしましょうね!!

さて、しばらく撮影を続けると、遂に大本命が。

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↑後打ちですが...。

編成は手前からM4編成、M101編成、M102編成でした。

名古屋車両区所属で、主に三重県内のキハ40形、キハ11形などを置き換えるため導入されるものです。

今までのキハ25とは大きく印象を異にしており、スカートなどに甚だしくその印象が持たれます。

ここからは電車で名古屋駅に移動し、

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↑名古屋駅3番線停車中の同列車にも撮影を敢行。

他にも何人か同業者の方がいました。いい大人が平日の昼間なのに。

しばらくして列車は一旦枇杷島方面へ引き上げてゆきます。

余談ですが、この時撮影をする私たちを見るホームにいたお姉さんの目つきがかなり警戒を帯びたものになっていたのは、内緒の話です。

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↑車内には日本車両とJR東海の関係者がたくさん乗車していました。

この後は13番線へと移動。

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↑修学旅行貸切の新幹線700系などを撮影していると、

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↑先ほどのキハ25形6連が所属先となる名古屋車両区方面へと引き上げてゆきました。

たった4人のみの参加でしたが、有意義に過ごせたと思います。

これで本日の全行程は終了となり、駅前の模型店に行くなどした後、解散となりました。

 

おまけ

名古屋駅前・笹島交差点にて。

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↑基幹バス30周年記念ステッカーを付けた、基幹2系統の日野ブルーリボン。

本年は出来町通のいわゆる「バスレーン」を使用する基幹バスの運転開始から30周年ということで、同系統の車両には記念ステッカーが掲出されています。

ここ数年で基幹バスも車両の置き換えが著しく、時代の流れを感じますね。

 

本日もご覧いただき誠にありがとうございます。