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【文芸日誌】vol,1-6 ~30分小説報告5~

投稿者:

 
*この記事を読む前に、6日に投稿されたものを読むことを推奨します
 
得票数1位タイ!
テーマは『お花見』
 
季節的にもすごくいいお題ですなぁ
それではどうぞ

 
お花見     中丸さん

 
満開の桜が一本だけ、そして誰もいない場所が欲しい。
私はそう願いながら紙袋を握り、山の中を歩いていく。
最近は雑誌で地元を取り上げてしまい、どこもかしこも人や車の群ればかり。心は休まらないわ、ゴミのポイ捨ては増える。雑誌なんか無くなればいいのに。

溜まっていくうっぷんをよそに道なき道を昇っていく。誰の山かなんて知らない。雑草や落ち葉は整理されておらず、ところどころ色鮮やかなきのこも生えている。樹木に至っては触れるだけで樹皮がぼろりと崩れていく、ひょっとしたら樹齢は何十年、もしくは何百年かもしれない。中には腐っているものもあるだろう。

紙袋を落とさないように慎重に登っていくと、いきなり崖が現れる。崖と言ってもアメリカのように岩肌が露出しているようなものではなく、斜面にも木は生えており、薄暗さも、風が吹いた時の葉っぱのざわめきも今までと変わる事はない。

どこから降りたものか。あくまでも山登りが目的ではない。桜を探しているのだ。あては無い。あてがある所には人がいる。それでは駄目なのだ。

若そうな樹木を選びながら、移動していく。どうしても見当たらない時には片手をつきながら姿勢を低くし降りる。言葉にするだけなら単純かもしれないが、地面の具合は落ち葉や雑草で埋もれ全く分からない、もしかしたら穴となっている可能性もある。そして何より、片手は紙袋を持っている為に自由には使えない。素人ならば間違いなく転げ落ちてしまうだろう。勿論私も素人だ、油断はしない。

降り切って辺りを見回すと、しばらく平坦な道のりが続いているようだ。空を見上げ太陽の位置を確認しておく。まだ高いし、時計を見ても時間に余裕はありそうだ。このまま進む事にしよう。

気の向いた方向へ、勘と言っても間違っていない程、適当に足を運んでいく。気がつくまではただ、桜の事で頭が一杯だったのだ。

どれ程、登って降りてを繰り返しただろう。額の汗を拭いながら時計を見ると、大分長い事居たらしい。流石に引き返さないと、と思い足が止まる。どちらにいけば戻れるのだろう。

耳を澄ましても人工的な音は一切聞こえない、携帯電話は圏外。そこまでいってようやく自分の状態に気付いた。遭難したのだ。

事実に気付いた途端に足の筋肉が疲れを訴えだし、休みたくなってくる。しかしここで休み始めるとあっという間に日暮れとなってしまうだろう。

とにかく前へ進む事にしよう。今までの景色はどうせ覚えていないのだし、ひょっとしたら山の反対側に出られるかもしれない。

そうして歩きだし、又も登ったり降りたりと繰り返す。増えていくのは疲れと太陽の角度と同じような映像のみ。

このままひょっとしたら死ぬかもしれないな。と、冗談だと言いきれない現実が襲いかかってきた時、

桜があった。

今まであった木々が全て失せ、日の光を遮るものは無くなり、しっかりと目に飛び込んでくる。満開の桜だ、あった。

今の私にはオアシスのように思える桜に走っていき、根元で花を見上げる。淡い色の花弁は風が吹くと、何枚か散っていく。幻では無いのは明らかだ。

私はさくらから数歩後ずさり、紙袋を開け、中身を桜へとぶちまける。中からは白い粉が舞い、桜にかかっていく。

「おばあちゃん、ここがおばあちゃんのお墓だよ」
 
遺言にあったおばあちゃんから私への最期のお願いを叶え終えると、達成感と疲れからか意識が薄れていき、桜へともたれかかる。

 不思議と桜は、おばあちゃんの手の感触と似ていた気がする。
 
 
 
 
 
 
 
 
30分小説報告を綺麗にまとめていただきました
 
 
今回の入賞5作品のうち、4年生が3名もランクイン
さすがです
遅れをとらないように、新入部員とも力を合わせて頑張っていきましょう
 
そして俺、バイト4連勤とダダかぶりなのによく毎日更新できた
よかったぁ…
 
さて、水曜日からは本格的な討論会がいよいよ始まります
新メンバーを多数迎え、どうなることやら……

コメント ( 2 )

毛糸2011年04月12日

べ、別に悔しくなんかないんだからね!

真水登2011年04月13日

 次こそは時間内に書いてみせる。下剋上等。
 

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