文芸研究会 学祭企画-フレーズ小説②-文芸研究会

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文芸研究会、ブログ更新担当神鉈 悠(かみせゆう)でございます。今回は9号館企画「フレーズ投稿」で投稿していただいたフレーズから

部員が小説に書き起こしたものを再び投稿させていただきます。なお作品は複数存在するため作者は非公開です。ご容赦ください。

お題:僕の記憶が正しければ、僕と君はキスをしたはずだ

「『僕の記憶が正しければ、僕と君はキスをしたはずだ』」
「ええ、そうね」
「いや、おかしいだろ。何が『そうね』だよ」
「話をあわせてあげてるのに何よその言い草」

 心外だとでもいうような顔で僕の傍らに立つ彼女とは付き合ってるわけでも仲が良いわけでもない。どっちかってーと苦手な部類。
 ただの部活仲間だ。ベタだけどじゃんけんに負けた僕達が次の劇のために買い出しに行くハメになっただけだ。
 そして冒頭の台詞は次の劇に組み込まなければならない台詞の一つだ。
「で、その『記憶』は結局正しいの? 間違ってるの?」
「いやいや、正しい正しくないの前に台詞だろ」
「じゃあそれを事実にしてあげましょうか?」
 そうすれば台本も書きやすいでしょう? といつになく綺麗に微笑む彼女だが、僕は知っている。彼女がこの笑顔を見せるのは面白がっている時だ。
「好きでもない奴にそういう事を言えるキャラだったかお前」
 薄笑いを浮かべる僕に近づくと、いきなり胸ぐらを掴まれた。
 頭突きでもかまされるのかと少し身構えていたのに、ぶつけられたのはやわらない何か。しかも頭や鼻ではなく唇。

 顔が離れるといつもとは違い妖艶な微笑みを浮かべて
「嫌いではないもの。......さ、これで台本書けるわよね?」
 そしてすたすたと先を歩いていってしまう。
「やってやるよ」
 彼女にはきこえないような声で吐き捨てると彼女の後を追った。