55. 秋の日の散策
10月8日火曜日、雲一つない快晴で、気持ちのいい秋晴れ。久しぶりに昼休みに時間ができたので、学長室のメンバーを誘ってキャンパスを散策することにしました。10月に入ってから30度近くまで気温が上昇し、「衣替え」と言う言葉が不似合いな日々が続いた矢先に、過ごしやすく爽やかな陽気となりました。
昼休みに入ったばかりで、多くの学生がキャンパス内を行き交います。不言実行館の前では、中部大学ボランティア・NPOセンターの学生達が災害支援の募金活動をしていました。ささやかな募金を行い、学生を励ました。
そのまま北へ進み、右手に緑濃い木々に囲まれた書院を横目に見ながら、二人連れだって人文学部を目指します。キャンパス整備のおかげで、歩道がゆったりと広くなったことを感じます。25号館の中に入ると、廊下から見える中庭で学生たちが談笑している光景が大学らしい趣を醸し出しています。高い天井と、明かり取りの天窓が開放的な第3学生ホール(食堂)は、昼食をとる学生で溢れていました。25号館から裏道を抜けて、新しい宇宙航空理工学科の15号館を見て、立体駐車場の横を通り、サブグラウンドの方へと向かいました。
気持ちのいい青空。すれ違う学生が挨拶をしてくれるので、一層清々しい気持ちになります。メイングラウンドの東側にあるクラブ・サークルプラザから学生が練習しているのでしょうか、楽器の音色が聴こえてくると、ふと
「秋の日の/ヴィオロンの/ためいきの/ひたぶるに/身にしみて/うら悲し」
という上田敏の翻訳詩が思い浮かびました。
秋と言っても紅葉には早いキャンパスですが、10月ということで思い出したことがあります。カナダのプリンス・エドワード島を舞台にしたモンゴメリの「赤毛のアン」の中で、アンが、「10月が存在する世界に住んでいてうれしい」と、10月に対する想いを述べるところがあります。
I'm so glad I live in a world where there are Octobers. It would be terrible if we just skipped from September to November, wouldn't it?
カナダでは11月になると、冬の訪れです。7年間住んでいたカナダの大学では、9月に新しい学年が始まり、11月になると冬の気配がします。その間の10月は特別な感慨があったことを思い出します。
図書館を右手に見て、芝生を横切って坂を上り、第1学生ホール(食堂)まで戻ってきます。学生ホールで多くの学生が語り合う風景は格別です。いい教育空間がここにはあると感じます。散策の途中で足をとめ、教員と話すことも、また楽しいものでした。
昼休みが終わり、学生たちも講義室へ移動し始めたころ、私も学長室へ戻り爽やかな気持ちで執務にとりかかりました。