学長ブログ

51. 海象

地球を半径40cmの球と考えると、私たち人類の営みは表面の約1mmの所に限定されています。リンゴを地球とすると、あたかもリンゴの皮の所に、人々が住んでいるように。そんな地球の全表面の71%が海水に覆われているのだという。日々の生活の中で、私たちは雨風を気にかけて気象に注意を払っています。

昨日も九州で、記録的短時間大雨情報が出され、5万7千人に避難指示が出されたという。今も豪雨災害が続いています。私たちは気象情報に耳を傾けます。

海に囲まれた日本では、大気中で起こる自然現象である気象とともに、海洋における自然現象である海象(かいしょう)が気になるところです。

60年前の1959年9月26日、日本本土を直撃し、全国32道府県に犠牲者5098人を出した大型台風がありました。特に、愛知県、三重県を中心に被害が広がったために伊勢湾台風という名前で知られています。ここ春日井の地でも死者19人、全半壊家屋2632戸、農作物の被害甚大、市内の大木が何百本あるいはそれ以上も倒されるという大きな被害を出しました。

何より大きな被害を出したのが、海象条件の急激な変化によるものでした。台風の気圧低下により海面が吸い上げられ、伊勢湾周辺全域に高潮を発生させ、強風によって海水が海岸に吹き寄せ、堤防より高い5メートルもの未曾有の高潮により、大災害に繋がっていったと考えられています。

日本全国広範囲にわたって被害をもたらした伊勢湾台風。子どもだった私は当時、兵庫県南部に住んでいました。大阪府と兵庫県の境を流れる近くの川が氾濫寸前となり、心細い思いで家族で避難の準備をしたことを今でも覚えています。

1995年の阪神・淡路大地震、2011年の東日本大震災と、日本列島で地震と津波による巨大災害が続き、南海トラフの巨大地震が話題になる中、伊勢湾台風を体験した世代が高齢化して、若い世代に語り継がれていないことを感じます。地球温暖化は確実に海面上昇を引き起こしており、海象の変化による複合的な自然災害が心配されるところです。