学長ブログ

90. 20-80ルール

穀物の種まきを意味する24節気の芒種(ぼうしゅ)も過ぎて、東海地方は梅雨入りしました。キャンパスに接した応用生物学部実習農場では学生さんによる田植えも終わり、田んぼには苗の頭が少し出るくらいに水がいっぱい張られています(写真1)。

緊急事態宣言が解除され、「3密」の状態に気を付けながら、大学構内では一部の対面授業が始まっています。久しぶりに仲間に出会い、ソーシャルディスタンスを気にしながらも、少しの間でも一緒に話ができる学生さんの顔からは喜びを感じとることができます(写真2)。

人と人のつながりが人間社会の基本であり、大事なことだと改めて感じます。20世紀後半、米国の社会心理学者スタンレー・ミルグラムは、6人辿れば誰とでも繋がれる、つまり6人を介して世界中の人がつながっていることを、手紙の実験で証明しています。ここ10年の急速な情報通信技術の進展により、人々は瞬時に世界中につながりを広げることができます。4年前、16億人の利用者を持つフェイスブックが行った実験では、約4人辿れば、利用者の誰とでもつながると分析しています。これはSNS上の人のつながりの話ですが、急速にグローバル化が進んだ現代人の地球規模での移動は、感染症の拡大を時間的にも空間的にも新たな展開に導いているように思えます。

19世紀のイタリアの経済学者パレートは、イタリアの富の80%は、20%の裕福な人に集中していることを見出し、これは『20-80のルール』あるいは『パレートの法則』として知られています。原因の2割が結果の8割になっているということを表す経験則です。例えば「上位2割の顧客が、売り上げの8割を生み出す」、「家電製品の故障原因の上位20%が、80%の故障を説明できる」、「教科書の重要なところ2割を覚えれば、テストで80点が取れる」と言ったように、原因のごく小さな割合が、結果の大きな割合になっていることを意味しています。

働きアリの研究もあります。「働きアリ」と言っても、よく働くアリは20%で、その働きアリが集団に必要な80%の食糧を取ってくるというのです。もっとも、よくは働かないか全く働かない80%のアリの中でも、60%のアリは少しは働くようで、20%のアリだけはずっとさぼっています。しかし、アリの社会では、よく働くアリと少しは働くアリを合わせた80%のアリが疲れ切ったときや働けなくなった時に、このサボりの20%が働きだして集団を救う力になることも知られています。

6月2日のニューヨークタイムズによると、新型コロナウイルスに感染した1次感染者の20%が、2次感染者の80%に感染させてしまっているそうです。過去の感染症でもこのようなことは起こっているということです。ここでも『20-80のルール』が当てはまるようです。

愛知県では報告されている感染者は殆ど0になってきましたが、まだ新型コロナウイルスが絶滅したわけでもなく、無症状で報告されない感染者の存在もあります。緊急事態宣言が解除され外出自粛規制がなくなっても、引き続き気を抜くことなく過ごしていくことが大切です。

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(1)田植えを終えたばかりの応用生物学部実習農場

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(2)学生が戻ってきた大学構内