学長ブログ

10. 石狩超電導国際フォーラム

中部国際空港セントレアから北海道の新千歳空港へ。さらに車で石狩市に移動して、国際フォーラムに参加。中部大学が石狩平野の広大な土地を使って行った実験で良い成果を出したので、それを記念する意味でも開催された国際会議です。実験は「高温超電導直流送電システムの実証研究」という長い名前の実験ですが、使われる超電導ケーブルを通している管の長さも1キロメートルというなが~いものです。実験棟から出て、地上でまっすぐに伸びたパイプの先端は定かにはわからないほど(写真を見てください)。山口作太郎教授(超伝導・持続可能エネルギー研究センター長)率いるチームの実験については昨年の科学雑誌Natureでも紹介されていました。

1日目は石狩市の大ホールで一般の市民も参加できる同時通訳付きの会議で、2日目は研究者中心の専門家会議。1日目は市民参加ということで会場は400人満員。田岡克介石狩市長、高橋はるみ北海道知事、飯吉厚夫理事長・総長の挨拶で始まり、増田寛也元総務大臣も挨拶。会議の中心は日本・中国・韓国・ロシア・スウェーデンの科学者によるエネルギー輸送の議論。地球規模での国境を越えた持続可能な未来のエネルギー戦略が語られました。夜の懇親会は場所をホテルに移し、さらに多くの人が集まりました。国会議員の方々をはじめ、実験施設にかかわる多くの企業の方や、外国からの出席者、中部大学同窓会北海道支部の方々にも出席いただき大変盛況でした。

僕の役割は2日目研究会の冒頭のあいさつ。研究会では中部大学の石狩プロジェクトの実験結果の紹介と、各国の電力事情と将来の見通しが議論されました。午後はテレビでおなじみの本学客員教授涌井史郎先生による第4次産業革命の話を聞く。これからは経済中心の利益結合型社会ではなく、自然と人間の共生の地縁結合型社会の実現が大事との話でした。

夜は石狩市長主催のおもてなしバーベキューパーティ。石狩の伝統、石狩鮭を塩漬けにし、寒干しして作る寒塩引(かんしおびき)と、北海道のお酒がふるまわれて、パーティでは日本語、英語、ロシア語、中国語が入り混じる。田岡市長と飲みながらゆっくり話をする機会を得ました。

驚いたことに、明治のころ、春日井から石狩に移住者が多くあったという。これは1891年の濃尾大地震で被害を受けた愛知県春日井郡(現在の春日井市を含んだ広域にまたがった)住民の北海道移住ということである。現在535万人の北海道は他府県を上回る速さで人口減少が進んでおり、現在人口5万8千人の石狩市でも人口の減少と、少子化が問題とのこと。田岡市長は市長職に18年就いているが、次のなり手がいないので困っているとのこと。北海道庁のある札幌まで30分の距離で、学生や勤め人は石狩から札幌に出るということ。ところが札幌の男性は職を求めて関東に移住するという。その結果、人口196万の札幌では女性105万人、男性91万人で、女性対男性の比は100対88(全国では100対95)。確かに女性人口のほうが多い。

途中で寒くなってきて、屋外から室内へ移動し話が続いた。パーティが盛り上がったところで、締めのあいさつで、田岡市長にバーベキューパーティのお礼、料理を準備してくださった市役所の皆さん、市民の皆さんに感謝、そして研究会参加者には英語で、研究会が成功のうちに終わったことへの感謝を述べて散会となりました。

北海道石狩湾のそばに設置された高温超電導直流送電システムの実証研究のためのパイプライン
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