学長ブログ

34.土用三郎

暑中お見舞い申し上げます。
先日友人から暑中見舞いの葉書をいただきました。
7月20日に土用入りが始まり、8月6日で土用明けとなります。夏ばてが心配される時期でもあり、暦の上で最も暑さが厳しいとされる土用です。メールが当たり前となり、暑中見舞いの葉書をやりとりすることが少なくなりました。今年の夏は30年に一度もない異常気象と言われ、夏ばてというよりも、もっと深刻な熱中症という言葉が毎日聞かれるように思います。

酷暑という言葉から、1等星シリウスを思い浮かべ、古代エジプトを連想します。古代エジプトで、毎年決まってやってくるナイル川の氾濫を、シリウスの観測を通して予測したというのです。シリウスが日の出前に現れる日、そして再びその日が巡ってくるまで、1年は365日という暦を作り上げたのです。シリウスが日の出前に現れると、暑い夏の始まりです。

おおいぬ座の口の所にあるシリウスは、ギリシャ語で焼き焦がすものと言う意味で、英語で「Dog star」とも呼ばれています。シリウスは日本で言う土用の頃、日の出の直前に太陽に先んじて地平線に現れ、昇りだして、昼間も太陽のそばにあり、二つ並んで強い光が大地を焦がし、炎暑をもたらすと昔の人は考えたのでしょう。英語で最も暑い頃をDog daysと呼んでおり、これが日本語で言う土用にあたる時期と重なります。

日本では暑い土用の一日目を土用一郎と呼んだそうです。漁村では、シリウスが昇るより1時間ほど前の、空が白みはじめる東の沖のほうに、土用一郎の日に一つ昇り、二郎の日に次の一つ、三郎の日に三つ出そろうと言ったそうです〔野尻抱影著「星365夜」による〕。これはオリオンのベルトに当たる三つ星で、東の空から昇るとき、縦に三つならんで現れます。天の赤道上にあるため、三つ星が昇るのが正確に東にあたります。この三つ星のことを、「土用の三つ星様」と呼ぶ地方も有るようです。明け方の東の空にこの星が昇る頃、酷暑の土用がやってくるのです。

8月3日午後、名古屋では128年間の観測史上初となる40.3度を記録したという。まさに灼熱の夏。8月7日は暦の上では立秋、それでもまだまだ猛暑は続きそうです。夏の炎暑、酷暑というより、もっとひどい今年の異常な暑さです。立秋を過ぎれば、時候のあいさつは変わります。
残暑お見舞い申し上げます。

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白みはじめる東の空に、土用三郎の日にはオリオン座の三つ星が出そろいます。
そして日の出直前に、太陽に先駆けてシリウスが昇ってくる。今年は灼熱の夏。