学長ブログ

94. ワクチン

私が小学生の頃、かわいい仔犬を飼っていました。名前は「ころ」。ある週末の朝のこと、ころを抱いて家の門から外へ出たとき、白いスピッツがころをめがけて猛烈に走ってきて、いきなりころを抱いている私の腕を噛んだのです。叫び声を聴きつけて出てきた両親は狂犬病感染を恐れて、私を直ちに病院に連れていき、手当てを受けさせました。記憶はそこで途切れています。

19世紀のこと、フランスのルイ・パスツールは、化学を学び、その後生物を学び、微生物学そして医学の研究に進んでいきました。46歳の時、脳出血で左の手足が不自由になりながらも研究を続け、ウイルスの病原性を弱めたものを植えつけると、その病気にかからないことを発見しました。60歳を過ぎてパスツールは、狂犬病に対してワクチンを作り出すことに成功しています。私がスピッツに噛まれて病院で受けた手当ては、狂犬病ワクチンだったのかもしれません。また英語で加熱殺菌のことをパスツーリゼーションと言いますが、パスツールの名前を取って命名されたものです。

愛知県では緊急事態宣言が再び出されました。新型コロナウイルス感染症のさらなる広がりから不要不急の行動自粛や、県をまたいだ移動の自粛を求めるものです。中部大学は今日で春学期の授業が終了しますが、宣言を受けて大学としての対応を決めたところです(本学ホームページのお知らせ)。

3月半ばから顕著になった感染者数は5月半ばにいったん落ち着きを見せ、再び6月後半から勢いをつけてさらに増えています。100年前のインフルエンザウイルスによるスペイン風邪では足掛け3年、ぶり返しを繰り返して、日本では約40万人の命が失われました。

新型コロナウイルスに対して、各国でワクチンの開発が進んでおり、複数のワクチンが現在臨床試験中であるというニュースは希望をつないでくれます。パスツールが切り拓いた研究の成果が今につながっていることを感じます。

暦の上では立秋でも、コロナで自粛が求められ、外は炎天下で熱中症の心配と、楽しみにくい真夏の到来ですが、何とか乗り切りたいものです。

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キャンパスの西側に位置する総合グラウンド。手前のサブグラウンドと、陸上競技用タータントラックをもつメイングラウンド(三幸橋から撮影)。その向こうに野球場が少し写っており、さらに緑の向こうにはテニスコートがあります。メイングラウンドでは人工芝の改修工事が進行中です。