学長ブログ

39. フランス訪問② フランスの大学

フランスの高等教育機関は大きく分けて、ユニベルシテ(université)とグランゼコール(grandes écoles)になります。高校卒業後、国家試験であるバカロレア(Baccalauréat)資格を取って、高等教育機関に入ることができます。ユニベルシテは3年の学士課程、その上に3年の修士課程、そして3年の博士課程からなります。ユニベルシテは日本の大学制度(学士4年、修士2年、博士3年)に近いので大学と訳されています。

一方、高等専門教育機関であるグランゼコールは通常、バカロレア後に、2年間のグランゼコール準備級(Classe préparatoire)を修了して、それから選抜を経て、グランゼコールで3年間学ぶことになります。おおざっぱに言うと、大学(ユニベルシテ、université)は教養を深めるためにあり、それに対して比較的新しくできたグランゼコールは実践に直結する学問を学び、産業界、官界の指導者養成を目指しているところといえます。今回は伝統的な大学であるペルピニャン大学と、グランゼコールであるボルドー工科大学を訪れました。

今年の春ペルピニャン大学(UPVD, Université de Perpignan Via Domitia)のファブリス・ロレンテ学長が中部大学にいらっしゃった折に連携をすすめる約束をし、今回は私がフランスを訪れ、大学連携協定締結を実現しました。南フランスの小都市ペルピニャンは人口約12万人。ペルピニャン大学は、14世紀にイベリア半島を統治したアラゴン国王により創立された比較的小規模な大学です。法学・経済学、人文学・社会科学、自然科学を学ぶ10,000人足らずの学生で、そのうち留学生は2,500人という国際色豊かなキャンパスの大学です。太陽光発電を中心とする再生エネルギーの研究や生命科学の研究所を見学しました。本部のあるペルピニャンキャンパスから少し離れた旧市街地に、住民との地域連携を図るために作られたという新しいキャンパスがありました。そこにある会場で、大勢の人に見守られる中での協定式となりました。ペルピニャン大学は欧州高等教育圏のエラスムス・プラス計画に参加しており、今後中部大学と交流をすすめます。

ペルピニャンを出て、ドミティア街道沿いに在来線の列車でナルボンヌまで行き、そこから高速鉄道でトゥールーズを経て、ボルドーまで。

人口25万人、ワインの産地として有名なボルドーにある、ボルドー工科大学(Bordeaux INP)エンサーブ・マトメカを訪問。ボルドー工科大学はエンジニアリング系のグランゼコールで、8つの研究科からなり、中部大学は、そのひとつENSEIRB-MATMECA(Electronics, Computer Science, Telecommunications, Mathematics and Mechanics)と、2005年から協定を結んで学生交流を進めているのです。研究科名最初のENSはL'Ecole Nationale Supérieure(直訳すると国立上級学校)から取られています。最も古い研究科はENSCBP(化学、生物、物理)で19世紀末に設立されていますが、ENSEIRB-MATMECAは1920年設立です。最も新しい研究科はENSC(認知心理)で2003年にできています。私が行った中部大学を紹介する講演会には多数の学生が参加してくれました(写真参照)。日本語がしゃべれる人はいますかと聞いたら、誰も手を上げないので、今度は、では日本語を勉強している人はいますかと聞いたら、ほとんどの学生が手を上げるので、日本がこんなにも興味を持たれていることに驚きと喜びを覚えたものです。今後も学生交流が続くことを期待するところです。

フランスではほとんどの高等教育機関は国立で、授業料は基本的に無料です(私立の高等教育機関で学ぶ学生は2014年の時点では約14%)。バカロレア受験率がここ25年間で、35%から66%となり、高等教育の大衆化と共に財政的な問題が起こっているようです。欧州高等教育圏に入るにはボローニャプロセスで規定される枠組みにはいる必要があり、高等教育の質が確保されることが求められます。ボローニャプロセスでは、モビリティという言葉で表されるように、学生と教職員の大学間移動を伴う国際化が推進されています。

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ペルピニャン大学(UPVD)正門を入ったところ。

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ファブリス・ロレンテ ペルピニャン大学学長と私は協定調印前に、出席者の教職員を前にお互いの大学のことを紹介し合いました。

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ペルピニャン大学のPROMES(物質プロセスと太陽エネルギー研究所)。ディディア・オーセル副学長が案内役。

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ペルピニャン大学とボルドー工科大学は、トゥールーズの南東と北西に位置します。

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世界遺産にも登録されたボルドー市街。

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ボルドー工科大学。中部大学の紹介を聞きに来た学生達と。私の右隣がフランソワ・リベ国際センター長、左隣がクレア・エナフ副学長。

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ボルドーはワインの産地。ワイナリー見学。クレア・エナフ副学長とマーク・ファリポウ学長と昼食。