学長ブログ

40. ラムサール条約

週末の午後はよく女房と二人で散歩をして、庄内川の土手に行きます。一度、伊勢湾に注ぐという河口に行ってみようというので、名古屋駅から名古屋臨海高速鉄道あおなみ線に乗って南下、名古屋港に向かいました。

岐阜県恵那市に源を発する流路延長96kmの河口は、あおなみ線野跡(のせき)駅で降りて、歩いて稲永(いなえ)公園に着くと、目の前にありました。庄内川と新川と日光川の河口が交わるところは、大潮の干潮時には最大200ヘクタールもの湿地が広がるという藤前干潟です。川から運ばれた土砂が堆積してできる砂泥地は、約6時間ごとに起こる潮の満ち引きによって、現れたり水没したりするそうです。

我々が着いたときは満ち潮のころで、水位が高く、それでも庄内川と新川の間の細長い島に鳥の姿を確認することができました。干潟の岸にある、野鳥観察館に備え付けの双眼鏡で見ることができました。我々がいる間にも、鶚(ミサゴ)が、翼を羽ばたかせて空中でホバリング飛行を行った後に急降下し、両足で水の中にいる鯒(こち)を捕らえるところを目撃することができました。スタッフの方が鳥の名前と魚の名前を教えてくださいました。そして今日は朝から、数百羽を観察したとのことでした。

藤前干潟は、湿地の保全を目指すラムサール条約湿地に登録されています。ラムサールは条約締結の地であるイランの都市の名前です。藤前干潟では渡り鳥を含めて、約120種類の野鳥が飛来すると言います。シベリアなどの北半球の繁殖地とオセアニアなどの南半球の越冬地を往復するシギ、チドリ類の中継地だそうです。干潟には鳥たちの餌となるカニやゴカイや小魚がたくさんいて、渡り鳥たちにとっての休息と栄養補給の、大切な場所となっています。

野鳥観察館の隣にあった稲永ビジターセンターで、渡り鳥のことを学びました。以前カナダのサスカツーンに住んでいたころ、10月後半だったでしょうか、テニスをしている頭上で、カナダグース(雁)がV字型編隊を組んで飛んでいるのを見たことを思い出しました。冬の餌場を求めて、何百キロも飛んでいくのでしょう。先頭の雁が独特の声で鳴くと、一斉に方向を変えるのです。そのV字型の集団がいくつもいくつも南に向かって飛んでいく姿をしばらく眺めていると、とても感慨深いものがありました。サスカツーンに住んでいた頃お世話になったサスカチェワン大学の高谷邦夫名誉教授が、最近サスカツーンで撮られた写真を、掲載させていただきます。

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名古屋港。庄内川、新川、日光川の河口が交わるところにできた藤前干潟。    

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内川流域図。庄内川流域を緑線で囲む。恵那市にある源から矢印で流路を示し、瑞浪市、土岐市、多治見市、そして春日井市にある中部大学の近くを通り、名古屋市を通って、名古屋港にまで流れ着く。薄い水色は想定氾濫区域で、濃い青色が名古屋港を表している。
[国土交通省河川局「庄内川水系の流域及び河川の概要」(2005)]

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サスカツーン在住の高谷邦夫名誉教授が11月に撮影。高谷先生によると、結構低空で、珍しく逆3角形に飛ぶ様子をとらえたと言うことです。通常は3角形の先端が前になって飛んでいきます。