学長ブログ

2018年12月の記事

41. 2018年という年

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2018年という年は振り返ってみれば、いくつもの大きな節目になった日があったように思います。年末にあたり、少し整理しておこうと思います。

1.2018年1月。150年前の1868年、明治が始まりました。明治維新から150年です。元号も明治、大正、昭和、平成と変わり、世の中の様子も変わってきました。鹿児島で生まれた私の父親は明治生まれ、広島で生まれた母親は大正生まれ、大阪で生まれた私は昭和生まれ、そしてテキサス生まれの娘は平成生まれ。思い起こしてみると、それぞれが時代のにおいをまとって生まれ、生きてきたように感じられます。

2.2018年11月11日。100年前の1918年、第1次世界大戦が終結しました。ドイツ、オーストリア・ハンガリー、オスマン帝国が崩壊し、大戦前にロシア革命によって生まれたソヴィエト連邦とともに、帝国主義勢力の再編が起こることになりました。日英同盟に基づいて参戦した日本は戦勝国として、軍事力をさらに強化する一方、関東大震災(1923年)や金融恐慌(1927年)に見舞われる中で、思想・言論・教育が統制されていくことになります。

3. 2018年12月23日。85年前の1933年、天皇陛下が誕生されました。平成最後の天皇誕生日。天皇は象徴として生きてこられたこれまでのことを振り返られて思いを述べられました。

4.2018年12月8日。80年前の1938年、名古屋第一工学校が鶴舞での設置を認可された学園創立記念日です。学校法人中部大学(三浦学園より名称変更)の誕生です。この日には毎年、永年勤続者が表彰されます。今年は40年勤続の2人を含めて、54名の方を永年勤続者として表彰しました。また学園はこれまでに12万人の卒業生を世に送り出しています。

一方、77年前の1941年、学園創立からちょうど3年経った日に、日本軍による真珠湾攻撃により太平洋戦争が始まりました。終戦の年に、名古屋空襲で学園はすべてを失い、復活するのにずいぶんと年月がかかることになりました。日本では終戦の日に色々な行事が行われますが、アメリカでは12月7日がパールハーバー追悼記念日です。1991年、50周年の日にテキサス工科大学にいるただ一人の日本人教授として、複数のテレビから取材を受けたことを思い出します。

5. 2018年6月1日。75年前の1943年、5万人の人口で春日井は市制を施行しました。現在は31万人となり、そこにある唯一の総合大学として、1万1千人の学生を抱える中部大学が存在します。2006年に連携協定を結び、市と大学は学生・教職員を巻き込んで様々な活動で連携をしています。春日井ビジネスフォーラムや文化活動等で市長と一緒に挨拶する機会が多くあります。12月に開催された春日井市民第九演奏会は、春日井市、春日井市教育委員会、かすがい市民文化財団と共に、事務局を中部大学においた実行委員会(実行委員長 学長)が主催しました。

2019年がもう目の前です。2019年が中部大学にとってさらなる飛躍となることを期して、新しい年を迎えたいと思います

40. ラムサール条約

週末の午後はよく女房と二人で散歩をして、庄内川の土手に行きます。一度、伊勢湾に注ぐという河口に行ってみようというので、名古屋駅から名古屋臨海高速鉄道あおなみ線に乗って南下、名古屋港に向かいました。

岐阜県恵那市に源を発する流路延長96kmの河口は、あおなみ線野跡(のせき)駅で降りて、歩いて稲永(いなえ)公園に着くと、目の前にありました。庄内川と新川と日光川の河口が交わるところは、大潮の干潮時には最大200ヘクタールもの湿地が広がるという藤前干潟です。川から運ばれた土砂が堆積してできる砂泥地は、約6時間ごとに起こる潮の満ち引きによって、現れたり水没したりするそうです。

我々が着いたときは満ち潮のころで、水位が高く、それでも庄内川と新川の間の細長い島に鳥の姿を確認することができました。干潟の岸にある、野鳥観察館に備え付けの双眼鏡で見ることができました。我々がいる間にも、鶚(ミサゴ)が、翼を羽ばたかせて空中でホバリング飛行を行った後に急降下し、両足で水の中にいる鯒(こち)を捕らえるところを目撃することができました。スタッフの方が鳥の名前と魚の名前を教えてくださいました。そして今日は朝から、数百羽を観察したとのことでした。

藤前干潟は、湿地の保全を目指すラムサール条約湿地に登録されています。ラムサールは条約締結の地であるイランの都市の名前です。藤前干潟では渡り鳥を含めて、約120種類の野鳥が飛来すると言います。シベリアなどの北半球の繁殖地とオセアニアなどの南半球の越冬地を往復するシギ、チドリ類の中継地だそうです。干潟には鳥たちの餌となるカニやゴカイや小魚がたくさんいて、渡り鳥たちにとっての休息と栄養補給の、大切な場所となっています。

野鳥観察館の隣にあった稲永ビジターセンターで、渡り鳥のことを学びました。以前カナダのサスカツーンに住んでいたころ、10月後半だったでしょうか、テニスをしている頭上で、カナダグース(雁)がV字型編隊を組んで飛んでいるのを見たことを思い出しました。冬の餌場を求めて、何百キロも飛んでいくのでしょう。先頭の雁が独特の声で鳴くと、一斉に方向を変えるのです。そのV字型の集団がいくつもいくつも南に向かって飛んでいく姿をしばらく眺めていると、とても感慨深いものがありました。サスカツーンに住んでいた頃お世話になったサスカチェワン大学の高谷邦夫名誉教授が、最近サスカツーンで撮られた写真を、掲載させていただきます。

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名古屋港。庄内川、新川、日光川の河口が交わるところにできた藤前干潟。    

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内川流域図。庄内川流域を緑線で囲む。恵那市にある源から矢印で流路を示し、瑞浪市、土岐市、多治見市、そして春日井市にある中部大学の近くを通り、名古屋市を通って、名古屋港にまで流れ着く。薄い水色は想定氾濫区域で、濃い青色が名古屋港を表している。
[国土交通省河川局「庄内川水系の流域及び河川の概要」(2005)]

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サスカツーン在住の高谷邦夫名誉教授が11月に撮影。高谷先生によると、結構低空で、珍しく逆3角形に飛ぶ様子をとらえたと言うことです。通常は3角形の先端が前になって飛んでいきます。      

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