学長ブログ

46. カザフスタン

カザフスタンで30年にわたって在位した大統領が3月に任期を残して辞任し、新大統領の下で首都の名称が変更されたというニュースが伝わってきました。私がカザフスタンを訪れたのはもう10年ほど前の秋のことです。

アルファラビカザフ国立大学のプラズマ物理の教授をしている友人に、博士学生の論文審査の外部審査員として招かれたのです。大学名にあるアルファラビは、イスラムの世界ではギリシャの哲学者アリストテレスに次ぐ、有名な哲学者だという。アルマティにあるホテルの窓を開けると、目の前に天山(テンシャン)山脈が広がり、迫っていました。息を飲む美しさとはこういうものかと思ったほどです。滞在中は最高のもてなしを受けて、歓迎会に出て、いろいろなところを見る機会を得ました。

加古さとし先生の「万里の長城」にも描かれた、シルクロードの天山北路(草原の道)に位置する騎馬遊牧民族が支配したカザフスタン。アジアでは中国・インドに次ぐ広大な面積を持つだけあって、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタン、ロシアそして中国と国境を接しています。アルマティのすぐ南は、キルギスです。カザフスタンには遊牧民族の文化が残っていて、カザフスタン人には、日本人のような顔立ちをした人もいれば、ヨーロッパ人のような顔立ちの人もいました。私の友人のトレックと並ぶと、ふたりとも口ひげがあり、どちらが日本人かわからないほど。まさに他民族が行きかい、融合した世界都市といったところでした。

さて、そのカザフスタンで大統領が変わって、首都の名称が変わるという。私が訪れたアルマティは美しい旧都で、1929年から、ソ連邦から独立した1997年まで首都だったのです。遷都によって新しい首都は、カザフ語で首都を意味する「アスタナ」と名付けられたそうです。その首都の名前が、30年間統治したヌルスルタン・ナザルバエフ前大統領に敬意を表して、アスタナから「ヌルスルタン」に変更したというのです。

ロシアでは指導者の名前を地名に使う例があるので、その流れに沿ったものかもしれません。なお、カザフスタンでは首都名が変わるのは過去60年で4度目にあたるということです。名前が変わるのは、歴史の激動を表すものの、落ち着かない気もします。偉大な指導者の名前が都市名になるのは、それほど特別なことでもなく、アメリカ合衆国の首都ワシントン、ベトナムのホーチミンなど例はたくさんあるようです。しかし、レーニンの名前を取ったレニングラードが、サンクトペテルブルグに変わったように、ナザルバエフ前大統領の評価が、歴史的に変わるときが来れば、また名称変更となるのかなと、カザフスタンに親近感を持つ私は思うばかりです。

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ホテルの目の前の天山山脈。ラマザノフ教授の率いるプラズマ研究室グループ。
中央私の隣がトレッカブル・ラマザノフ教授。