学長ブログ

98. キャンパスが再び学生であふれた日

オリエンテーションのために、続々と学生が春日井の丘を登ってきました。密を避けるために、正門と三幸橋の2か所に設けられた仮設テントの検温所で、すべての学生が検温を受けてキャンパスに入ります。ほとんど行列になることはなく、スムーズに進む中、坂を急いで登ってきた学生が、若干体温が高い判定となり、テントの中で一旦呼吸を整えた後、再度検温して確認することもありました。最終的に今日は7,000人弱が、検温所を通過しました。事前に「朝の検温」と「熱があれば無理をせず休養」ということをお願いしていましたが、全員がマスクを着用して、高い意識を持って登校している様子を見て、安堵しました。

学生の顔も晴れ晴れしており、教職員もなんだかうれしそうです。私もキャンパスを歩いて周り、オリエンテーション中の講義室を覗き、うれしくなります。学生のいるキャンパスがこんなにも活気があり、楽しく感じられるのかと、これから始まる秋学期が楽しみになります。長く続いた自宅でのパソコンを前にしての遠隔授業と、勉強した時間は、人生の中で、後から振り返って、きっと特別な時間となることと思います。来週からは、秋学期の授業が対面と遠隔の半分ずつで始まります。

学生の皆さんが自宅で遠隔授業によって勉強していたように、日本の社会では、多くの企業でテレワークという形態が取り入れられました。自宅勤務をすれば通勤時間が無くなることや、リラックスしてマイペースで仕事ができるといった声も聞かれます。コロナが終息したとしても、大学の授業形態として一部ではオンラインの形式も取り入れられていくことが考えられるように、社会でもテレワークは浸透していくことでしょう。働き方も大きく変わっていくに違いありません。

世界でもグローバル化が進展する中で、グローバル企業ならずとも、テレワークの働き方はどんどん広がっていました。コロナ禍でその傾向はますます広がっていくことでしょう。しかし、興味深いのはすでにテレワークの先駆者としてのアメリカの企業であるIBMとYahoo!の動きです。1980年代から在宅勤務を推奨してきて社員の25%が自宅をオフィスとして使っている米国IBMは、数年前にオフィス勤務に方針変更しています。米国Yahoo!ではそれより前に動き始めました。コロナ禍の前のことですが、すでに二つの企業では、大胆なイノベーションは仲間と直接会って話す中から生まれてくる、ということで在宅勤務からオフィスでの勤務に舵を切っていたのです。

それまでにも知られていたWater Cooler Effect(水飲み場の効果とでも訳せばいいでしょうか)を再認識していたのです。つまり、決められた時間と設定された会議ではなく、思い思いの時間に、冷水器の周りに人が集まりそこで会話が弾み、考えもしていなかったことが閃いてくることがあるという現象です。仕事ができる良い環境の中で、直接仲間と出会える場の重要性が再認識されています。私がテキサスの大学で教鞭をとっていた時に、事務室につながるコーヒールームで、思い思いの時間に集まった人たちと交わしたちょっとした会話が、人間関係を築くとともに、情報交換の場となり、新しい閃きの場所になっていたことを思い出します。

学生同士や、教職員と学生が集まって交わす会話の中から、思いがけないアイデアも浮かんでくることもあります。教員・職員・学生からなる大学人にとっても、時間と素晴らしい空間を共有し、その中での仲間との結びつきが新しい学びを生むのではないかと、改めて感じました。