学長ブログ

97. 春日井にある芭蕉の句碑

「来与(いざとも)に穂麦喰らわん草枕」 

松尾芭蕉が1685年の初夏に春日井で一晩の宿を借りたときの句であると、県道名古屋犬山線(上街道)沿いの正念寺の門前に記されています。宿の主が芭蕉に旅の疲れをねぎらって、まだ熟さない麦の実を石臼で引いて振る舞ったというのです。この句によって麦穂坂と呼ばれるようになったという街道の坂道に、その碑を見つけました(写真)。

「荒海や佐渡によこたふ天河」 

数年後、芭蕉の「おくの細道」に記されている七夕の句とされる、天の川の描写です。旧暦の7月7日、七夕に当たるのは明日。

中国から伝わった七夕物語はすっかり日本に定着しました。天の川をはさんで光る織り姫(こと座の一等星のベガ)と彦星(わし座の一等星アルタイル)が、1年に一度しか会えない七夕の日には晴れることを祈ります。

アラビア語でベガは「急降下する鷲」を意味し、アルタイルは「飛ぶ鷲」を意味します。ベガは琴座の中にある隣の二つの星とともにΛの形をして、鷲が翼をたたんで落ちてゆく姿に見えます。わし座のアルタイルを中心とする星の集まりは、全体が大きく翼を広げた鷲のように見えます。七夕伝説と同様に、ここでもこの二つの一等星は一対と見られていたことが想像できます。ギリシャ神話ではベガは竪琴を飾る宝石で、わし座の鷲はゼウスの使いです。

春日井を訪れた俳聖を思う時、イギリスで感染症から逃れて家に閉じこもっていた芭蕉と二つ違いのニュートンを思い出しました。「アンヌス・ミラビリス」(ブログNo.64)を書いてから、5カ月。コロナは収まる気配はなく、これまでに世界中で2,300万人が感染し死者は80万人を超え、日本でも6万人が感染し死者は千人を超えています。七夕の日にあって、再びキャンパスにみんなが自由に入ってきて、集い楽しく学ぶことができる、そんな当たり前の日が早く戻ってくることを祈ります。

「一万人キャンパスの待つ秋学期」

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名鉄小牧線春日井駅の近くにある正念寺の門前に立つ芭蕉句碑と札