学長ブログ

100. ミレニアル世代、Z世代

コロナ禍が収まるどころか、欧米では再び勢いを増す傾向もみられる中、アメリカの大統領選挙が行われます。第2次世界大戦が終わり、今年で75年。バイデン前副大統領は戦時中、トランプ大統領は戦後のベビーブーム世代の生まれで、年齢が高い候補者同士の戦いはアメリカとしては珍しいことです。74歳のトランプ大統領はSNSのツイッターを使って情報発信し、そのフォロワーは8,700万人にも達し、若い層にも支持を広めているようです。大統領選のニュースを見ながら世代のことを考えました。

戦後生まれのベビーブーム世代は日本では団塊世代(1947~1949年生まれ)とも呼ばれ、経済成長の時代に育っています。次の団塊ジュニア(1971~1974年生まれ)が社会に出る頃には経済が傾きはじめました。世紀の変わり目である2000年の頃に育っているのがミレニアル世代(1980年代前半~90年代後半生まれ)と呼ばれます。電子機器が普及した時代に育ち、デジタルネイティブであり、インターネットが当たり前の世代です。

日本で少子高齢化が進行する中で、大都市圏に人口が集中し、ミレニアル世代は仕事が集まる大都市に集中してきました。首都圏を中心に交通機関が発達し、都心に集まった職場に通っています。しかし、大都市を中心に新型コロナウイルス感染症が広がったために、大都市集中型の働き方を見直す動きが出てきました。

日本の人口は1967年に1億人を超え、いまは1億2千万人ですが、ここ10年は減少が続くなか、首都圏への流入はなお続いています。経済の中心が都市にあり、その都市に人口が集中して過密状態となる日本で、少子化が起こり、地方では過疎が進行しています。大学時代に読んだ羽仁五郎の『都市の論理』が思い出されます。そこには「自立した自由な市民が集まる場所」として都市が描かれています。しかし、今や日本の大都市は、経済活動中心の超過密状態となっています。

働きの中心であるミレニアム世代よりさらに若い世代は、Z世代と呼ばれることがあります。XYZのZです。10代からソーシャルメディアに触れて、スマートフォンを使いこなすソーシャルネイティブで、大学生とそれより年下の世代です。ゲームや動画に親しみ、自ら世界中に発信もして、LINEやツイッターといったSNSによって日本や世界の仲間ともつながっています。

Z世代は、国籍を超え、人種を超え、性別を超え、そして障害のあるなしにかかわらず交流でき、多様性(ダイバーシティ)と、すべての人を包み込むインクルージョンの精神が特徴として挙げられるようです。仲間とつながっているため、地球環境や社会問題に対しても敏感になっています。時に、新聞を読まない、本を読まないと言って、上の世代から非難されることもありますが、ソーシャルメディアを通して、情報はしっかり押さえているように思えます。まさに地球規模で新しい文化の担い手が生まれようとしているように感じます。

新型コロナウイルス感染症は多くの人の命を奪い、厳しい試練を我々に課しています。コロナ禍はまだ続くでしょうが、少しずつですが、大学や社会は確実に変化の準備をしているように思えます。新たな価値観を持つ社会の中心になっていくのは、ミレニアル世代とZ世代なのでしょう。社会に大きな変革をもたらす力が、新しい世代にあるような気がしています。コロナ禍がその変化を加速しているようにも思えます。ミレニアル世代、Z世代に夢のある世界を作る担い手となることを期待したいところです。