学長ブログ

101. 気嵐

週末のニュースによると、今季一番の冷え込みを迎えた奈良公園では、池の表面から湯気のように霧が立ち上る気嵐(けあらし)が観測されました。奈良市では昼間20℃近くまであったのが、朝方には4.6℃まで下がったそうです。冷やされた陸上の空気が比較的暖かい池のほうへ流れ出し、水面の水蒸気を冷やすことによって発生するといわれ、蒸気霧ともいわれるそうです。

カナダの中央に位置するサスカチェワン州のサスカツーンという街に住んでいたころのことを思い出しました。秋の終わりに、インディアンサマーと呼ばれる異常なほど暖かい日が続いたあと、11月に入ると冬が訪れ、気温はどんどん下がっていき日も短くなります。-10℃、-20℃、そして12月も後半になると-30℃を下回る日もでてきます。

サスカチェワン大学から川を挟んだところに住んでいました。朝早く車で家を出て大学に向かいます。光り輝いて、上方に向かって光の柱が立つ美しい朝日。川沿いの通りに出ると、川から立ち上る湯気のような霧が温泉にでもいるような気分にさせます。しかし車の外は極寒。

中国のことわざに「氷凍三尺、一日の寒にあらず」(川に三尺の氷が張るのは、1日の寒さによるものではない)というように、流れる水はなかなか凍ることはありません。

川の表面は氷が張っても、水面下では凍ることなく流れていて、水面上は陸地よりも温度が高く、空気の流れができて冷たい気流の中に霧が発生します。川沿いに植えられた木々は霧氷で覆われて、白い花が咲いたような美しさになります。冬の間中、この幻想的で美しい景色を見ながら大学に通うのが楽しみでした。

あとになって、日の出と思ってみていた美しく力強い朝日は実は偽物で、それが幻日(サンドッグ)であることを知ることになります。これについてはブログNo.18で詳細に記しています。

さて、話を現実に戻すと、寒さがやってくると心配なことは新型コロナウイルスのさらなる感染拡大です。オーストラリア、ブラジル、南アフリカといった南半球に位置する国では、冬に当たる7月末から8月初めに感染者数が最大になったことが報告されています。

これから寒くなり、空気が乾燥してくるとウイルスは感染力を強めてきます。その一方で、寒さに伴って体温が下がると我々の免疫力が落ちてきます。一部まだ遠隔授業が行われていますが、キャンパスには多くの学生が集まっています。構内に入るところでは検温が行われ、学生の皆さんはマスク着用で、感染予防は万全です。引き続き、皆さん気をつけましょう。