学長ブログ

2017年5月の記事

6. ナイトウォーク ―真夜中の42キロ

春日井の丘に登れば独特の風が吹いています。独特の空気、雰囲気があります。大学全体にみなぎる気風があります。今日はその風が生まれる背景を見たような一日でした。

さわやかな晴天の土曜日、朝一番で、三浦幸平メモリアルホールに集まった約300人の工学部・経営情報学部・国際関係学部3年生の保護者に、最近のキャンパスの様子をお話ししました。「父母との集い」は開学3年目にして生まれた後援会が主催するもので、50年近く続いています。保護者と教員・職員が一体となって学生を育てていこうという試み。午後には、同じ場所で4年生の保護者に集まっていただいて話をする機会を持ちました。

その後、私は不言実行館ACTIVE PLAZAに移動して、新入生に対して、中部大学の歴史について、教育について話をし、懇談をしました。

それが終わったところで、ニュースが飛びこんできました。豊田市の野球場で行われていた硬式野球部の愛知大学野球春季リーグ戦の試合結果です。9回逆転3ランで名城大学に勝利。その結果、9年ぶりに全日本大学野球選手権大会出場決定という快挙。

そして、太陽が傾くころ、野外ステージ前の芝生には学生が集まりだしていました。今年で23回目のナイトウォーク、真夜中の挑戦です。80人の挑戦者。春日井キャンパスから42キロ先の恵那キャンパスまで、学生クラブ運営委員会が周到な準備の下で企画し、見守り送り出すのです。学生支援課の職員を含め58人がサポートにまわります。私は「千里の道も一歩から」を引き合いに出して、蛍光色のゼッケンをつけた80人とそれを取り巻く大勢の人たちに向かって話し出しました。1里は人間が1時間で歩く距離を基準に決められており約4キロであること、恵那キャンパスまでの10里の道のりを、江戸時代に使われた庶民の街道「下街道(したかいどう)」に沿うようにして山道も含めて、「五里霧中」という言葉も引き合いに出して、約12時間かけて無事に歩き通し、恵那キャンパスでの朝食にみんなが元気で集まれるようにと激励。私の話のあと、工学部3年生の運営委員長のあいさつ、チアリーダー部による応援演技、シンフォニックバンドの元気の出る演奏。そしてクラブ運営委員会からの諸注意確認の後、午後7時、80人それぞれが同窓会から支給された懐中電灯を片手に、出発ゲートをくぐり、チアリーダーや大勢の仲間が見守る中を出発。

出発式が終わり、夕暮れのキャンパスを、出発式を見に来た妻と共に歩いていました。今日一連の出来事を振り返り、一つ一つが、中部大学ファミリーの中で起こっていることで、その一つ一つの積み重ねが、春日井の丘の空気を、風を、雰囲気を作り出していることを思って、うれしくなったのです。ちょっと涼しくなってきて、学生たちが内々(うつつ)神社を通るころは寒いんじゃないかな、と心配しながら、暗い夜道を歩くみんなの無事を祈っていました。

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5. 中部大学に天文台ができた

中部大学天文台天体観測所が、春日井キャンパスの北西の一角に完成し、5月10日に多くの来賓、中部大学の教職員、学生、中部大学第一高等学校、中部大学春日丘高等学校、中部大学春日丘中学校の生徒を招いて開所式が行われました。土井隆雄宇宙飛行士にもお越しいただきましたので、生徒は大喜びでした。土井先生は中部大学創発学術院の客員教授でもあります。テープカットには国立天文台台長の林正彦先生、春日井市の伊藤太市長、飯吉厚夫理事長、松尾直規中部大学天文台台長にも参加いただきました。写真の後ろに見える直径4mのドームに、口径30cmの反射望遠鏡と口径15cmの屈折望遠鏡を配備し、さらに館内には3Dプラネタリウムを備えています。

開所式の後、場所を移して、不言実行館アクティブホールで記念講演会が開催されました。国立天文台台長林正彦先生の話は、古代から現代にいたる宇宙観の変遷と、多くの天体写真を交えて星、星団、宇宙の話、宇宙は「平ら」で、ダークエネルギーが70%を占めるという現在の宇宙観が紹介されました。土井先生の話は、1985年の毛利衛さん、向井千秋さんとともに宇宙飛行士として選抜された時から、1997年STS(Space Transportation System)-87と呼ばれる87番目のスペースシャトル「コロンビア」でのミッションにおける日本人初の船外活動の話、2008年のSTS-123でスペースシャトル「エンデバー」を使って、国際宇宙ステーションに日本の実験棟きぼうを設置したことなど、わくわくする話が映像を見ながら語られました。スペースシャトルは400km上空を、1時間半で地球を一周するため、45分ごとに昼と夜がやってくるという話を聞いて、私自身カナダにいる時に、夜空を見上げて星のように光るスペースシャトルが動いていくのを見つけて、感動したことを思い出していました。数分間明るく光って動いていくのが見えたのです。そのことを思い出して、ここで計算してみると、スペースシャトルの速度νは、スペースシャトルの円軌道の半径をR、周回にかかる時間をTとすると

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で与えられて、スペースシャトルが半径6400kmの地球の上空400kmのところを回っているので、R =6400+400=6800km、1時間半(90分)で回るのでT =90×60=5400秒 をいれると、

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となり、秒速7.9km、時速にすると2万8千キロ。確かに天空をはやい速度で動いていくものですね。

私自身はプラズマ物理を専門としていて、プラズマや宇宙のことについてもいずれ、このブログの中で書こうと考えています。

中部大学天文台天体観測所開所式でのテープカット。左から石原、林正彦国立天文台台長、飯吉厚夫理事長、伊藤太春日井市長、松尾直規中部大学天文台長
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講演会で主催者挨拶。中部大学開学50周年を記念して2年前に建てられた不言実行館の中で、学園80周年の1年前に完成された天文台の開所式が無事終わり、中部大学ファミリーにわくわくする教育研究施設がまた増えた、とあいさつ。
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「宇宙をめざせ」不言実行館アクティブホールとサテライト会場の聴衆に土井隆雄宇宙飛行士が呼びかけた。
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