学長ブログ

2017年12月の記事

22. ちゅとらのおうち

2017年の出生数は2年連続100万人を割り、過去最少の94万1千人、そして100歳以上の人口は6万8千人という厚生労働省の発表。比較のために挙げると1971年には、出生数が200万人で、100歳以上は339人です。年を追って若者が減り、高齢者が増えてきています。新卒採用、定年退職というこれまでの日本型雇用慣行のままでは、働く人が少なくなり、社会は成り立たなくなってしまいます。若者にとって、未来が見えにくい社会になっているのかもしれません。

『不言実行、あてになる人間』の建学の精神を掲げる学校法人中部大学は、来年80周年を迎え、学生・教職員すべてにとって、わくわくする未来を感じることができるような学びの拠点、探求の拠点となるように、教育・研究・文化・体育施設を備え、環境整備を続けています。その一つとしてキャンパス内に保育園を作ります。学園で働く子育て中の人が0歳から小学校就学前の子供を預けることができるのです。場所は幼児教育学科のある現代教育学部の建物の近くです。

保育園の名称は、学生・教職員から募集して選定され、親しみやすさから『学校法人中部大学保育園ちゅとらのおうち』と決まりました。最終候補に残った7名を表彰し、設置準備委員会のみなさまとともに来年6月開園を心待ちにして、記念写真を撮りました。私が膝に抱いているのが、中部大学のマスコット『ちゅとら』です。オープンキャンパスで、『ちゅとら』と並んで、一緒に撮った写真も載せておきます。

中部大学ファミリーが一人ひとり、個人の持てる力を、自ら見出し引き出していくことができる、そんな空間を、春日井の丘に作り上げて行きたいと思っています。保育園開設準備に関わる仲間の活動を見ていて、明るい未来を切り開く種がここにあると感じて、うれしい気分になりました。

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2017年12月21日 表彰者と設置準備委員会の委員と共に

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ちゅとらのおうち 完成イメージ図

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ちゅとらと並んで。オープンキャンパスにて

21. メロン

チバニアンは地球の地質年代を表す言葉でした。思い出したことがあります。チバという名前の猫のことです。学生結婚して二人でアメリカの留学を終えて、最初の職場がカナダの大学でした。留守番を兼ねて家を借りることになりました。その家にいたのが、黒と白の、気品のある顔をしたチバでした。二人とも、猫を飼ったことがなく、また特に猫が好きなわけでもなかったのですが、自由に生きるチバはなぜか好きになりました。犬は人につき、猫は家につく、と言いますが、確かにチバは家についているようでした。飼い主が変わっても、われ関せずという風な調子で、我々のそばにいました。ガレージから家に入るドアには、猫用の小さな扉があって夜中でもチバは出入り自由でした。

カナダからアメリカに移り、テキサスにいるときに、子供に児童文学斎藤洋作の『ルドルフとイッパイアッテナ(講談社)』を読み聞かせました。猫のルドルフがふるさとの中部地方を離れて東京に出てくる話です。ルドルフが猫の友達イッパイアッテナから、猫の教養について教わるのがおもしろいところです。日本に戻ったら中部地方へ行ってみたいものだと思っていました。

日本に戻ると、テキサス生まれの大学生の娘が下宿先で飼っていたメロンを、うちに連れてきました。東京では2階のベランダの手すりから、落ちたことがあります。マーク・レヴィが書いた『Why cats land on their feet (プリンストン大出版)』によると、猫は4つ足を延ばして体をよじらせて、体を回転させて着地するということです。これはスケート選手が伸ばした両手を縮めることによってくるくる回転することができることと同じ原理で、物理用語で言うところの、角運動量の保存です。ということで、メロンは2階から落ちても平気でした。

中部地方に引っ越しすることになりました。ルドルフはトラックによる移動でしたが、メロンは乗客の少ない年末に新幹線移動です。彼女は家につくのではなく、妻についているようです。私がつかまえて、だっこしてやると、しばらく私の顔をまじまじと見て、すぐに逃げていくのですが、妻には抱かれたがるのです。前足をそろえて、背筋をまっすぐにして、朝日を見ている姿は哲学者の雰囲気です。そういえば元飼い主の娘は、いまは大学院を出て哲学者の卵になっています。

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春日井に移って大好きなタワーに乗ったメロン。
朝日が出るときには前足をそろえて、窓越しに日が昇るのを見つめています。

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