学長ブログ

2020年4月の記事

75. First coronavirus. Now....

アメリカではロッキー山脈とアパラチアン山脈に沿って、4月になると竜巻がよく起こる竜巻街道(ブログNo.14)という場所があり、昨日は多数の巨大な竜巻によって米国南部が被害にあったというニュースが流れました。私が留学していたテネシー州も一部で被害を受けたようです。米国全土で新型コロナウイルスの感染者数が50万人を超えて、拡大する中での出来事です。まさに複合災害です。アメリカの新聞に載っていた被害者の言葉が印象的でした。

「コロナウイルスが来たと思ったら、次は竜巻だ。(First coronavirus. Now a tornado.)」

アメリカ南部の各州では、新型コロナウイルスに対してこれまで出ていた外出禁止令(stay-at-home order)を一時解除して、避難所に人を収容しているとのこと。
世界のニュースに気を配りながらも、大学では着々と新学期授業開始の準備が進んでいます。遠隔を主とする授業方法についてのメッセージ(2020年度の授業日予定と授業方法について授業受講の準備【新入生の皆さん】遠隔授業の準備等【在学生の皆さん】)も、ホームページに掲載しました。そして今日、学生サポートセンターもWEB面談でのサポート体制を整えました。

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新しくなった学生サポートセンターがWEB面談を始めました。
https://www3.chubu.ac.jp/commons/news/25989/

74. キャンパスは美術館

学内を巡ると、多くの芸術作品と出会い、まるでキャンパスが美術館であるような気持ちになります。彫刻家清水多嘉示によって制作された創立者の胸像(ブログNo.69)、図書館のらせん階段のところにある『輝き』。キャンパスプラザの通路にある『メディタッション』では、女性の瞑想する顔が美しい(写真)。25号館前広場の噴水中央に設置された『躍動』は、生命の躍動がみずみずしく表現されています。

総合情報センターの前にある彫刻家川原竜三郎の『いのちの風』では、青空を背に、命の風が私達を高いところへ誘ってくれるような気がします(写真)。

絵画もたくさん飾られています。一つだけ紹介すると、50号館ロビーにある平岡靖弘が人間の命をテーマにした縦1.94m、横8.44mの巨大な四部作『風の棲処(すみか)』(写真)。圧倒され、命について考え込んでしまう魅力的な作品です。

芸術鑑賞は、心に安らぎや刺激を与えるだけではなく、新しい発想につながることもあります。大学が再開した折には、キャンパスでたくさんのインスピレーションを高めてください。

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キャンパスプラザにあるブロンズ彫刻女性立像『メディタッション』と顔の拡大

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総合情報センターの前にあるブロンズ像『いのちの風』

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平岡靖弘『風の棲処(すみか)』 「樹(たつ)る」「風の雫(しずく)」「風生ずる」「佇(たたず)む」

73. 挑戦

愛知県の緊急事態宣言を受けて、遠隔授業による授業開始の準備が進んでいます。11,000人の学生に向けて開講している、2,600を超える科目に対する実施は、緊急時における教育の在り方に対しての挑戦であり、教職員の献身的な努力が続いています。

世界を脅かす感染症は、文学作品の中でも取り上げられてきました。たとえば1947年のフランスのカミュによる「ペスト」、1964年の小松左京による「復活の日」など。ウイルスが我々につきつけているのは、いかにして制御するかという科学的な挑戦とともに、人間の不安や恐怖さらに人間社会の在り方を問う、人文・社会科学的な挑戦にもなっているのではないでしょうか。

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春日井の丘に広がる中部大学では、授業開始の準備を進めています。

72. 濃尾平野の天香具山

写真はキャンパスの中心にある書院『洞雲亭(どううんてい)』と茶室『工法庵(くほうあん)』の入り口です。まだアメリカで教鞭をとっていた頃、日本に一時帰国した時に、恩師に案内してもらった思い出深い場所です。この日本庭園で、池を眺めていると、自然に心が落ち着きます。

作家の曽野綾子先生が中部大学を訪れて、キャンパスの印象を次のように表現されました。『...私の驚きは大学の構内を包む生き生きとした緑の息づかいであった。......まっ平らな濃尾平野の中に突然浮かび上がった緑の岡はなぜか、「天香具山」のように見えた。』(Voice 2015年8月号より一部抜粋)

愛知県が緊急事態宣言を出すなど、自粛という言葉で一人一人の行動に制限がかかる今、世界・日本の危機というニュースばかりを見ていると、ストレスが溜まります。時々窓を開け、外の空気を吸い、空や遠くの山を眺めたりして、自然を感じてみてください。食事と睡眠を大切にして、心の健康を保つ工夫も忘れずに過ごしてください。

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書院洞雲亭と、茶室工法庵への入り口

71. 大学間連携講座

一年前、春学期の講義が始まり、「地域の防災と安全」という講義をしました。中部大学は愛知学院大学と大学間連携協定を結んでおり、2年前より15回からなる大学間連携講座を開いています。そのうち最初の2回はそれぞれの学長が講義をして、私は自然科学の観点から、そして愛知学院大学の佐藤学長は宗教学の観点から、防災の講義をしました。自分の講義ノートを振り返ると、災害として、地震と並んで感染症(パンデミック)のことを取り上げていました。その時には、その一年後に、感染症が世界的にこれほどにも拡大するとは予想もできませんでした。

今日も大学では感染症対策本部の動きがあります。総合大学の強みで、教授陣の中には感染制御に関する専門の医者もいますので、アドバイザーとして参加をお願いしています。愛知県でも感染拡大が続いており、本学でも緊急事態宣言の対象地域に準じた準備を進めています。

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2年前に外壁改修をした白亜の講義棟9号館。ここで昨年は防災の講義をしました。

70. 緊急事態宣言

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、4月7日付で緊急事態宣言が発令されたことを受けて、教職員、学生に向けて、ホームページから中部大学の対応を発信しました。愛知県は今回の発令の対象区域には含まれていませんが、大学は学生、教職員の生命と安全、健康を守ることを最優先に考え、今後も発信を続けていきます。

アメリカの心理学者スタンレー・ミルグラムは世界中の知人のネットワークがいかに繋がっていくかという実験をしています。その検証結果は「六次の隔たり(Six Degrees of Separation)」として知られています。世界中の人は知人の知人というように、知り合いの連鎖の中で、たった5人の仲介者により、6人目でつながっているというのです。世界中のほぼだれとでも6人目で繋がっているというから、世界は意外と狭いということ。人は『人間』という言葉が示すように、元来つながりを求める存在なのでしょう。しかし、今、新型コロナウイルスが、つながりを媒介しています。一時的に、人と人の物理的なつながりを断つことによって、感染拡大防止をするという、社会的責任が私たちに求められています。

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キャンパスの西端にあるメイングラウンド。ここが学生でいっぱいになる日が、早く戻ってくることを心待ちにしています。

69. 不言実行

新型コロナウイルス感染者数は世界で130万人、日本でも4千人を超えるまでになり、いよいよ日本政府から緊急事態宣言(7都府県対象、愛知県は対象外)が発令されるようです。中部大学では2月に設置した新型コロナウイルス感染症対策本部のもとに、教職員合同でチームを作り、授業運営班、ICT班、語学・実験・実習班、学生支援班などに分かれて、今後について検討しています。学長室には絶えず人の動きがあります。

今日は大学正門から入って上り坂の左手にある、創立者三浦幸平先生の銅像の写真を添えます。しだれ桜が満開となり、それは見事でした。建学の精神である『不言実行、あてになる人間』の不言實行(實は実の旧字)の文字が見えます。密集・密接を避ける意味で他者との距離を確保しながらも(アメリカではSocial Distancingと言われています)、困難な今でこそ、建学の精神を胸に団結していく必要があるときだと、三浦幸平先生の前で決意を新たにしました。

今日はうれしいことに、別の保護者の方からもブログに対するメッセージが入りました。読んでくださっている方に、感謝の想いです。

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正門の近くにある創立者三浦幸平先生の像

68. うれしい便り

二つのうれしい便りが届きました。

一つは海外からです。米国オハイオ大学からビデオレターが届きました。現在新型コロナウイルスの拡がりで、外出禁止のオハイオ州でも、桜が満開だそうです。中部大学と、協定を結んでいるオハイオ大学の間では、交換学生・教授が行き来しています。50年近く我々の交流は続いていて、毎年中部大学からは、100名近くの学生がオハイオ大学で学んでいます。

もう一つは国内からのうれしい便り。学長ブログに対して、新入生の保護者の方から、心温まる励ましの言葉をいただきました。本来なら、今日から授業が始まるところでしたが、学長ブログが、少しでも大学と学生の皆さんの間をつなぐことができれば、うれしい限りです。ここのところ授業再開に向けて準備に追われる中、アメリカと日本から同時に届いたメールに、ひと時の安らぎを感じ、大変励まされました。

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オハイオ大学から届いたビデオには、中部大学が贈った桜が、満開になったことが映し出されています。ビデオは皆さんも見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=QcOAEFUatEo&feature=youtu.be

67. 貴重な時間

新しい年度の第1週が終わろうとしています。新しく迎え入れた学部・大学院の新入生と編入生の2,876名を迎え入れる公式行事や、年度初めの教職員総会は無いものの、教職員の異動にともなう辞令式、新任の教職員に対する説明会などは、安全に配慮したうえで簡素な形で終えて、新年度の始動です。

アメリカのベストセラー『人生は20代で決まる』(心理学者メグ・ジェイ著、原題はThe Defining Decade)では、人生の中で強い影響を受けるのは20代での経験や出会いであると、データを基に示されています。私が自分自身を振り返ってみると、確かに、大学時代に考えたことや、先生との出会いが、その後の自分の考え方や生き方を決定づけてきたように思います。

今、新型コロナウイルスによって、大学の授業の始まりが遅れ、学生にとっては、思いがけない時間ができています。できればこの時間を、自分の内面を見つめる為に使ってください。振り返ったとき、あの時間が人生の中で特別な意味を持ったと言えるように。

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大学の入り口の風景は人がまばらです。緑も新入生を待つかのように、新緑の準備をしています。

66. オンライン

Society 4.0と言われる情報社会から、Society 5.0と言われる超スマート社会へと、今私たちはインターネット(IoT)がもたらす新たな産業革命の中にあると言われています。新型コロナウイルス感染が広がり、教職員は通常どおりの勤務を続けていますが、4月1日から28日までは、学生は原則として学内入構を控えるようにお願いしています。行動が制限される今こそ、インターネットを教育の中で十分に活用したいと思っています。

現在、中部大学で活用しているシステムとしては、教育支援ネットTora-Netや、オンライン学習ツール、独自開発した双方向型授業支援キューモ(Cumoc, Chubu University Mobile Clicker)があります。これらを現在の状況にいかにして活用していくかを、教職員で検討しています。

新型コロナウイルスの感染が若者の間でも広がりを見せています。健康に気を付けて、密閉・密集・密接の3条件を避けて行動してください。

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学長室より見える桜。今日は快晴です。

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