学長ブログ

2020年4月の記事

85. 学びたいことを見つけよう!

中部大学ではいろいろな形で学生の皆さんの学業、生活面等のサポートをしています。その一つに指導教授制度があり、学生には一人ずつ指導教授がつき、困ったことや悩みの相談に乗っています。学期が終わると、指導教授から報告が届き、今学生の皆さんが何を悩んでいるかを知る機会となります。

「学んでいる内容が自分の興味とは違っている」という学生さんの悩みもあり、思い出したことがあります。

中部大学の元教授が、姉妹校オハイオ大学で教えていた時の学生の話です。彼は最初学んでいる物理学が自分の興味とは違っていると感じ、悩んでいました。学ぶことを放棄せず、その後生物学を学び、物理学を構造生物学に応用しました。その学生ラマクリシュナンは、ノーベル化学賞(2009年)を受賞しました。興味を持てなかった分野と興味を持っていた分野が、新たな分野の発見につながった例と言えるでしょう。

オハイオ大学卒業生の彼は、現在、英国王立協会のCOVID-19専門家グループの議長を務めています。新型コロナウイルスがもたらすパンデミックの解決策を見つける仕事に携わっています。

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オハイオ大学のドーム状の屋根を持つロタンダは本学との友好のシンボルになっています(ブログNo.79)。

84. 月と金星

昨夜8時頃、ふと空を見あげると、西の少し高いところに三日月と、その右下にひときわ光り輝く金星が並んでいました(写真)。現在金星は地球に近づいており、今が最も明るく見える頃で、1等星の約100倍のマイナス4.5等の明るさになっています。思いがけない夜空の共演に忙しかった一日もコロナ騒動も忘れてしまうほどでした。

連休明けに授業開始になるので、昨日ホームページにて、学生の皆さんへメッセージを発信しました。遠隔授業、ネット環境などについて、準備状況をお知らせするとともに注意と協力をお願いしました。

愛知県では新型コロナウイルス感染者数が、一昨日1人、昨日は0人となり、国内の新規感染者数の伸びも抑えられているようです。しかし、専門家は感染拡大の第2波がくる可能性を危惧しています。皆で引き続き気を引き締めながら、感染が終息するまでがんばりましょう。時には夜空を眺め、「宵の明星」を楽しんでみてください。心が少しでも安らぎますように。

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左は中部大学の天文台です。右は昨日撮影した月と金星です。
スマートフォンでは細い三日月の形はとらえられていません。

83. 巨人の肩

勝守寛先生(故人)は中部大学第一高等学校の前身である名古屋第一工学校を卒業し、後に中部大学の教授となり、副学長を務められました。本学初めての姉妹校である米国オハイオ大学との交流も始められました。京都大学で出会った湯川秀樹先生の影響もあって、世界の平和を実現するための「世界連邦」の活動にも携わったことが知られています。

新型コロナウイルスは国境を越えて拡がっています。現在、ノルウェーに本部を置く感染症流行対策イノベーション連合では、世界が連携し英知を集めて、ワクチンの開発を進めていると、科学誌ネイチャー4月号で報告しています。

世界規模での医療崩壊と経済危機という難局を乗り切るために、ブラウン元イギリス首相は、臨時の世界政府の樹立が必要だと訴えています。これは平和な世界を目指し、世界連邦を構想した湯川秀樹先生や勝守先生の考え方に繋がるように思えます。

先人が成し遂げた上に新しい発見をすることを「巨人の肩の上に乗っている」と言うように、私達は多くの誇るべき先輩という巨人の肩に乗っており、その上に立つ我々は、先人の知恵に学んで遠い未来を見据え、進むべき道を切り開いていきたいものです。

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勝守元副学長が過ごした1号館は、その後増改築されました。

82. ドラえもん

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは、「21 Lessons:21世紀の人類のための21の思考」の中で、これからは情報革命によるAIとバイオテクノロジーが融合し、ビッグデータを利用することにより、世界が変わるかもしれないと言っています。

「感情を持つロボットなんてできるのでしょうか。」

「ドラえもん」はちょうど50年前に誕生し、未来からやってきたネコ型ロボットとして、のび太君の親友になりました。人間らしさが溢れる物語が描かれています。アメリカで育った私の子どもたちは、日本に帰省した際に持ち帰った何十冊もの漫画「ドラえもん」によって、日本語と日本の文化を吸収したような気がします。

ハラリは、上述の本で世界的な医療危機にも言及しており、最近の感染症の拡がりについて「最大の敵はウイルスではなく、心の中にある悪魔、つまり無知だ」と言っています。持続可能なグローバル社会を考えるに当たって示唆するところがあります。

新型コロナウイルスの感染が広がる今、ドラえもんは、どんな道具をポケットから出してくれるでしょうか。

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宇宙航空理工学科の教育エリア(実験室等)が入っている飛行機の翼をイメージした15号館

81. スマートエコキャンパス

すでにお知らせしましたとおり4月29日に新入生オリエンテーションが学内でできなくなり、新入生の皆さんと会える日が先延ばしになりました。大学では、新入生の皆さんにお渡しする配付物を明日「ゆうパック」で発送します。そんな中、本日行われたWeb会議のひとつで、広大なキャンパスの電力消費の現状確認とさらなる改善策について議論しました。

中部大学のキャンパスは、エネルギー(電気)を消費するだけではなく、「電気を作る」「電気を蓄える」「電気を賢く使う」ことを目指しています。この仕組みをスマートグリッド(次世代送配電網)と呼んでおり、本学は「電気設備学会開発奨励賞」をはじめ、数々の賞を受賞しました。

キャンパスは、エネルギーに関しても持続可能な社会のモデルとなっています。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、現代社会の持続可能性に対して疑問を投げかけているのかもしれません。中部大学では、総合大学として総力を挙げて、グローバル化した社会のあり方を探究したいと思っています。

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屋内プールの屋根に備えられた太陽光発電パネル

80. 統計 

新年度がはじまり数週間が経って、昨年度の卒業状況、新年度の入学状況など様々な統計が上がってきます。

2019年度卒業生のうち、就職を希望した学生の就職率は99.7%でした。6年前に比べて、求人企業数が2倍の約2万社となって、中部大学生が社会で求められる人材に育っていることが分かります。この高い就職率は全国的に見ても誇れるものとなっています。

入学志願者は、4年連続2万人を超え、今年は2,731人が入学しました。そのうち愛知県出身者は65%と過半数を占めていますが、全国38都道府県からくる学生が、キャンパスに集える日を待ち遠しく感じます。

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不言実行館6階の食堂のテラスから、西に小牧城が見えます。見晴らしの良さから学生に人気のスポットです。通常は室内でCNNの英語ニュースが放映されています。

79. 専門家に聞く

「感染症の予防には、石けんを使って手を洗いましょう。アルコールで消毒しましょう。」と、専門家から言われると、納得して実行しようという気になります。

電子顕微鏡でしか見ることができない新型コロナウイルスは、細胞を持たずに、リボ核酸RNAと言う遺伝子がタンパク質の殻に囲まれ、その外側にエンベロープと呼ばれる脂質の被膜がある単純な構造をしているそうです。その被膜には外に突き出たスパイク状のタンパク質の突起がついていて、それが王冠(ギリシャ語でコロナ)のように見えます。アルコールや石けんは脂質を溶解するので、エンベロープを破壊し、ウイルスの機能を失わせるのだそうです。

中部大学では、微生物学、予防医学を専門とする伊藤守弘先生が、学生サポートセンターのホームページ上で、動画を使ってわかりやすく説明してくれます。学生の皆さんは、Tora-Net のIDとパスワードを使って見ることができますのでご覧ください。

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緑の丸屋根のロタンダの奥に70号館。キャンパス内の木々は新しい葉が出始めています。

78. 穀雨

春分からひと月が経ち、二十四節気の「穀雨」になりました。恵みの春の雨が降り、キャンパス内は八重桜のピンクや、ハナモモの仲間である菊桃の赤い花が彩りを添え、木々も緑になりつつあります。

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木々の合間から見える不言実行館。キャンパスの彩りから、季節の動きを感じます。

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で外出禁止令や外出自粛要請が出されています。空も陸も交通量が減り、経済活動の縮小が大気汚染物質の排出減少につながり、都市の空気がきれいになったとも言われています。

あたかも世界中が、鎖国政策をとっているような感じすらします。グローバル化が進展する現在、情報を共有し、世界に広がる感染症を制御して、この危機を連帯して乗り越えることができれば、必ずしも経済活動最優先とはしない、社会の変革が訪れるような気がします。

教育においても、教室の役割、学びの在り方が大きく変わることになるかもしれません。新しい週の始まりです。

77. Dance in the Rain

新型コロナウイルスの感染拡大に対して、政府は「緊急事態宣言」を全国に広げ、愛知県は特定警戒都道府県に指定されました。私たちは3週間後の遠隔授業開始に向けて準備を進めており、新入生の履修登録、ネット環境、教員の教材準備など、課題はまだまだ多いのですが、教職員の教育に対する熱意を感じる毎日です。

屋上から東の方角を眺めると、道樹山、大谷山、弥勒山の春日井三山が望めます(写真)。周囲を見渡しながら、再び学生・教職員で溢れるキャンパスに思いを巡らせています。

自粛要請が出て、外出を控え、家にこもることが多くなります。日本中のみならず世界中がこのような状態になっています。そこで英国の作家V. Greeneの言葉を引用します。
Life isn't about waiting for the storm to pass. Learn to dance in the rain.
(嵐はやってくる。じっと通り過ぎるのを待つのではなく雨の中でも踊るすべを身に着けよう。)

困難な時にも、ともに学ぶすべを見つけ出していきましょう。

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キャンパスの東には春日井三山がすぐそばに迫っている。

76. 見えるもの、見えないもの 

新型コロナウイルスは0.1ミクロンほどの大きさで、目には見えませんが、電子顕微鏡では見ることができます。月は40万キロも離れたところにありますが、直径が3,500kmもあるため、地球上の人々が、どこからでも目で見ることができるものです。

地球から太陽までの距離は、月までの距離の約400倍あり、太陽の直径は月の約400倍あるため、ずいぶん遠くにある太陽でも、月とほぼ同じ大きさに見えます。先週の8日は今年最も大きいというスーパームーンと呼ばれる満月でした。月の公転軌道が楕円であるため、月と地球の最接近時が満月と重なる時に、スーパームーンになるのです。

17世紀のこと、英国でニュートンはペストという感染症の広がりのため、自宅にこもって万有引力に考え付き(ブログNo.64)、月の公転軌道を説明したわけですが、ほぼ同年代の俳人松尾芭蕉が、同じ満月を見ていたかもしれないと考えるのも、感慨深いことです。

ニュートンのいた英国で、今回新型コロナウイルスに感染したジョンソン首相を思うとき、時代を超えてもなお、感染症との戦いが続いていることを感じます。密集を避けて、密接を避けて、人との接触を断つことが勧められる今だからこそ、人との見えないつながりが、いかに大事かが感じられるときのような気がします。

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中部大学キャンパス 春日井の丘から、名古屋方面(写真右上)を見る。16日撮影。

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