学長ブログ

82. ドラえもん

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは、「21 Lessons:21世紀の人類のための21の思考」の中で、これからは情報革命によるAIとバイオテクノロジーが融合し、ビッグデータを利用することにより、世界が変わるかもしれないと言っています。

「感情を持つロボットなんてできるのでしょうか。」

「ドラえもん」はちょうど50年前に誕生し、未来からやってきたネコ型ロボットとして、のび太君の親友になりました。人間らしさが溢れる物語が描かれています。アメリカで育った私の子どもたちは、日本に帰省した際に持ち帰った何十冊もの漫画「ドラえもん」によって、日本語と日本の文化を吸収したような気がします。

ハラリは、上述の本で世界的な医療危機にも言及しており、最近の感染症の拡がりについて「最大の敵はウイルスではなく、心の中にある悪魔、つまり無知だ」と言っています。持続可能なグローバル社会を考えるに当たって示唆するところがあります。

新型コロナウイルスの感染が広がる今、ドラえもんは、どんな道具をポケットから出してくれるでしょうか。

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宇宙航空理工学科の教育エリア(実験室等)が入っている飛行機の翼をイメージした15号館

81. スマートエコキャンパス

すでにお知らせしましたとおり4月29日に新入生オリエンテーションが学内でできなくなり、新入生の皆さんと会える日が先延ばしになりました。大学では、新入生の皆さんにお渡しする配付物を明日「ゆうパック」で発送します。そんな中、本日行われたWeb会議のひとつで、広大なキャンパスの電力消費の現状確認とさらなる改善策について議論しました。

中部大学のキャンパスは、エネルギー(電気)を消費するだけではなく、「電気を作る」「電気を蓄える」「電気を賢く使う」ことを目指しています。この仕組みをスマートグリッド(次世代送配電網)と呼んでおり、本学は「電気設備学会開発奨励賞」をはじめ、数々の賞を受賞しました。

キャンパスは、エネルギーに関しても持続可能な社会のモデルとなっています。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、現代社会の持続可能性に対して疑問を投げかけているのかもしれません。中部大学では、総合大学として総力を挙げて、グローバル化した社会のあり方を探究したいと思っています。

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屋内プールの屋根に備えられた太陽光発電パネル

80. 統計 

新年度がはじまり数週間が経って、昨年度の卒業状況、新年度の入学状況など様々な統計が上がってきます。

2019年度卒業生のうち、就職を希望した学生の就職率は99.7%でした。6年前に比べて、求人企業数が2倍の約2万社となって、中部大学生が社会で求められる人材に育っていることが分かります。この高い就職率は全国的に見ても誇れるものとなっています。

入学志願者は、4年連続2万人を超え、今年は2,731人が入学しました。そのうち愛知県出身者は65%と過半数を占めていますが、全国38都道府県からくる学生が、キャンパスに集える日を待ち遠しく感じます。

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不言実行館6階の食堂のテラスから、西に小牧城が見えます。見晴らしの良さから学生に人気のスポットです。通常は室内でCNNの英語ニュースが放映されています。

79. 専門家に聞く

「感染症の予防には、石けんを使って手を洗いましょう。アルコールで消毒しましょう。」と、専門家から言われると、納得して実行しようという気になります。

電子顕微鏡でしか見ることができない新型コロナウイルスは、細胞を持たずに、リボ核酸RNAと言う遺伝子がタンパク質の殻に囲まれ、その外側にエンベロープと呼ばれる脂質の被膜がある単純な構造をしているそうです。その被膜には外に突き出たスパイク状のタンパク質の突起がついていて、それが王冠(ギリシャ語でコロナ)のように見えます。アルコールや石けんは脂質を溶解するので、エンベロープを破壊し、ウイルスの機能を失わせるのだそうです。

中部大学では、微生物学、予防医学を専門とする伊藤守弘先生が、学生サポートセンターのホームページ上で、動画を使ってわかりやすく説明してくれます。学生の皆さんは、Tora-Net のIDとパスワードを使って見ることができますのでご覧ください。

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緑の丸屋根のロタンダの奥に70号館。キャンパス内の木々は新しい葉が出始めています。

78. 穀雨

春分からひと月が経ち、二十四節気の「穀雨」になりました。恵みの春の雨が降り、キャンパス内は八重桜のピンクや、ハナモモの仲間である菊桃の赤い花が彩りを添え、木々も緑になりつつあります。

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木々の合間から見える不言実行館。キャンパスの彩りから、季節の動きを感じます。

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で外出禁止令や外出自粛要請が出されています。空も陸も交通量が減り、経済活動の縮小が大気汚染物質の排出減少につながり、都市の空気がきれいになったとも言われています。

あたかも世界中が、鎖国政策をとっているような感じすらします。グローバル化が進展する現在、情報を共有し、世界に広がる感染症を制御して、この危機を連帯して乗り越えることができれば、必ずしも経済活動最優先とはしない、社会の変革が訪れるような気がします。

教育においても、教室の役割、学びの在り方が大きく変わることになるかもしれません。新しい週の始まりです。

77. Dance in the Rain

新型コロナウイルスの感染拡大に対して、政府は「緊急事態宣言」を全国に広げ、愛知県は特定警戒都道府県に指定されました。私たちは3週間後の遠隔授業開始に向けて準備を進めており、新入生の履修登録、ネット環境、教員の教材準備など、課題はまだまだ多いのですが、教職員の教育に対する熱意を感じる毎日です。

屋上から東の方角を眺めると、道樹山、大谷山、弥勒山の春日井三山が望めます(写真)。周囲を見渡しながら、再び学生・教職員で溢れるキャンパスに思いを巡らせています。

自粛要請が出て、外出を控え、家にこもることが多くなります。日本中のみならず世界中がこのような状態になっています。そこで英国の作家V. Greeneの言葉を引用します。
Life isn't about waiting for the storm to pass. Learn to dance in the rain.
(嵐はやってくる。じっと通り過ぎるのを待つのではなく雨の中でも踊るすべを身に着けよう。)

困難な時にも、ともに学ぶすべを見つけ出していきましょう。

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キャンパスの東には春日井三山がすぐそばに迫っている。

76. 見えるもの、見えないもの 

新型コロナウイルスは0.1ミクロンほどの大きさで、目には見えませんが、電子顕微鏡では見ることができます。月は40万キロも離れたところにありますが、直径が3,500kmもあるため、地球上の人々が、どこからでも目で見ることができるものです。

地球から太陽までの距離は、月までの距離の約400倍あり、太陽の直径は月の約400倍あるため、ずいぶん遠くにある太陽でも、月とほぼ同じ大きさに見えます。先週の8日は今年最も大きいというスーパームーンと呼ばれる満月でした。月の公転軌道が楕円であるため、月と地球の最接近時が満月と重なる時に、スーパームーンになるのです。

17世紀のこと、英国でニュートンはペストという感染症の広がりのため、自宅にこもって万有引力に考え付き(ブログNo.64)、月の公転軌道を説明したわけですが、ほぼ同年代の俳人松尾芭蕉が、同じ満月を見ていたかもしれないと考えるのも、感慨深いことです。

ニュートンのいた英国で、今回新型コロナウイルスに感染したジョンソン首相を思うとき、時代を超えてもなお、感染症との戦いが続いていることを感じます。密集を避けて、密接を避けて、人との接触を断つことが勧められる今だからこそ、人との見えないつながりが、いかに大事かが感じられるときのような気がします。

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中部大学キャンパス 春日井の丘から、名古屋方面(写真右上)を見る。16日撮影。

75. First coronavirus. Now....

アメリカではロッキー山脈とアパラチアン山脈に沿って、4月になると竜巻がよく起こる竜巻街道(ブログNo.14)という場所があり、昨日は多数の巨大な竜巻によって米国南部が被害にあったというニュースが流れました。私が留学していたテネシー州も一部で被害を受けたようです。米国全土で新型コロナウイルスの感染者数が50万人を超えて、拡大する中での出来事です。まさに複合災害です。アメリカの新聞に載っていた被害者の言葉が印象的でした。

「コロナウイルスが来たと思ったら、次は竜巻だ。(First coronavirus. Now a tornado.)」

アメリカ南部の各州では、新型コロナウイルスに対してこれまで出ていた外出禁止令(stay-at-home order)を一時解除して、避難所に人を収容しているとのこと。
世界のニュースに気を配りながらも、大学では着々と新学期授業開始の準備が進んでいます。遠隔を主とする授業方法についてのメッセージ(2020年度の授業日予定と授業方法について授業受講の準備【新入生の皆さん】遠隔授業の準備等【在学生の皆さん】)も、ホームページに掲載しました。そして今日、学生サポートセンターもWEB面談でのサポート体制を整えました。

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新しくなった学生サポートセンターがWEB面談を始めました。
https://www3.chubu.ac.jp/commons/news/25989/

74. キャンパスは美術館

学内を巡ると、多くの芸術作品と出会い、まるでキャンパスが美術館であるような気持ちになります。彫刻家清水多嘉示によって制作された創立者の胸像(ブログNo.69)、図書館のらせん階段のところにある『輝き』。キャンパスプラザの通路にある『メディタッション』では、女性の瞑想する顔が美しい(写真)。25号館前広場の噴水中央に設置された『躍動』は、生命の躍動がみずみずしく表現されています。

総合情報センターの前にある彫刻家川原竜三郎の『いのちの風』では、青空を背に、命の風が私達を高いところへ誘ってくれるような気がします(写真)。

絵画もたくさん飾られています。一つだけ紹介すると、50号館ロビーにある平岡靖弘が人間の命をテーマにした縦1.94m、横8.44mの巨大な四部作『風の棲処(すみか)』(写真)。圧倒され、命について考え込んでしまう魅力的な作品です。

芸術鑑賞は、心に安らぎや刺激を与えるだけではなく、新しい発想につながることもあります。大学が再開した折には、キャンパスでたくさんのインスピレーションを高めてください。

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キャンパスプラザにあるブロンズ彫刻女性立像『メディタッション』と顔の拡大

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総合情報センターの前にあるブロンズ像『いのちの風』

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平岡靖弘『風の棲処(すみか)』 「樹(たつ)る」「風の雫(しずく)」「風生ずる」「佇(たたず)む」

73. 挑戦

愛知県の緊急事態宣言を受けて、遠隔授業による授業開始の準備が進んでいます。11,000人の学生に向けて開講している、2,600を超える科目に対する実施は、緊急時における教育の在り方に対しての挑戦であり、教職員の献身的な努力が続いています。

世界を脅かす感染症は、文学作品の中でも取り上げられてきました。たとえば1947年のフランスのカミュによる「ペスト」、1964年の小松左京による「復活の日」など。ウイルスが我々につきつけているのは、いかにして制御するかという科学的な挑戦とともに、人間の不安や恐怖さらに人間社会の在り方を問う、人文・社会科学的な挑戦にもなっているのではないでしょうか。

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春日井の丘に広がる中部大学では、授業開始の準備を進めています。

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